はじめに

7月24日公開の映画『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の人気が沸騰しています。公開3日間で興行収入22.4億円からスタートし、8月13日時点で80億円を突破、興行収入100億円も射程に入っています。

SNSではスーツ姿のおじさんがグッズを買い漁る姿まで話題になるほど、子どもだけでなく大人層への広がりも目立ちます。この社会現象を、投資家目線でどの銘柄に恩恵が向かうのか整理してみます。


一丁目一番地は、配給担当の東宝

本作の配給を務めるのが東宝(9602)です。公開日の7月24日には、劇場の満席報道を受けて株価が一時前日比6.66%高まで上昇しました。都内の劇場では公開初日から1日40回超の上映が組まれるところもあり、興行収入歴代1位の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に迫る回転数として話題になり、出足の強さが窺えます。

東宝にとってのポイントは、実は前期(2026年2月期)が『国宝』『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』などのメガヒットが重なった過去最高益の年だったことです。今期(2027年2月期)の会社計画は、この反動減を織り込み、営業収入3,450億円(前期比4.3%減)、営業利益620億円(同8.7%減)と保守的に組まれています。なお、帝劇ビルの解体工事費20億円は、この営業利益とは別枠の特別損失として通期予想に織り込まれています。

7月15日に発表された第1四半期決算でも、映画事業自体は増収を確保したものの、IP・アニメ事業の組織再編に伴う会計処理の影響で営業利益は28.3%減となりました。ただし会社側は通期予想を据え置いており、ちいかわに続き、9月公開の『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』、11月公開の『ゴジラ-0.0』など強力なラインアップを理由に、期初予想の達成とさらなる上振れを目指すとしています。もともと東宝は業績予想を控えめに出す傾向があるため、映画ちいかわのヒット次第では増額修正も十分期待できそうです。

なお、7月1日から映画鑑賞料金を一般で200円値上げする改定を実施していますが、この増収効果は期初の業績予想に織り込まれていません。値上げ効果とちいかわのヒットが重なれば、上振れ余地はさらに広がる可能性があります。

株価は、2025年8月に高値2,059円をつけた後、半導体関連株への資金集中に押される形で2026年5月には1,191円まで下落しました。足元は回復基調にあり、このまま上昇トレンドが維持できるかどうかに注目です。

サブ銘柄を狙うのならグッズ界隈の粧美堂

もう一段掘り下げると、映画のヒットはグッズ消費の拡大にもつながります。

キャラクター雑貨・化粧品の企画メーカーである粧美堂は、2025年12月の自社プレスリリースで「ちいかわリボンコスメシリーズ」(メイクブラシセットやアイシャドウパレットなど全5アイテム)を発表するなど、ちいかわのライセンス商品を公式に展開しているメーカーです。自社サイトにもフェイスマスクやネイルカラーなど専用の商品ラインナップページがあり、ちいかわ関連銘柄として名前が挙がるのには相応の根拠があります。

8月12日発表の2026年9月期第3四半期決算では、営業利益が前年同期比35.4%増の16.1億円となり、通期計画に対する進捗率は89.6%まで来ています。ただしこの決算短信自体にちいかわという固有名詞は登場せず、増益の理由として説明されているのはNB(ナショナルブランド)商品比率の上昇や高付加価値品へのシフトによる商品単価上昇、前期にグループ入りした株式会社ピコモンテ・ジャパンの寄与です。今回の3Q決算の好調さを映画ヒットによるものと断定できる材料はなく、ネット掲示板などでざわついている4Q上方修正への期待も、会社発表ではなく個人投資家の見立てにとどまる点は留意したいところです。

なお、ちいかわというキャラクター自体の著作権や版権管理は、イラストレーターのナガノ氏と、非上場のライセンス管理会社が担っており、IPそのものに直接投資できる上場企業は今のところありません。だからこそ配給やグッズ製造といった川下のビジネスを担う上場企業に、投資家の関心が向かいやすい構図になっています。

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