はじめに
・株価急落時に慌てて売却するとその後の反発局面で後悔を抱くリスクがある
・短期的な底値や天井を予測し続けるのは困難であり感情での判断は避けるべき
・平常時に生活防衛資金を確保し次の下落時の具体的な行動を1つ決めておこう
「ここまで下がるなら、いったん売っておいた方がいいのでは」。
株価が大きく下がる局面では、こう感じる人もいるでしょう。特に、最高値をつけたあとに相場が下がり始めると、不安は大きくなります。少し前まで増えていた資産が、日に日に減っていき、ニュースでは「急落」「半導体株安」「リスク回避」といった言葉が並ぶ。
そうなると、「まだ下がるかもしれない」「ここで売らないと、もっと損をするかもしれない」と考えてしまうのは自然なことです。
しかし、下落途中で売るという判断は、あとから見たときに必ず正解になるとは限りません。2026年6月25日、日経平均株価は終値で72,366円34銭となり、最高値を更新しました。そこから7月末にかけて下落が続き、7月30日時点では61,867円43銭と、高値から約14.5%安い水準まで下がりました。ところが翌31日、日経平均は1日で4%を超える急反発となりました。もし下落の途中で売っていたら、その人は何を感じたでしょうか。
この記事では、実際の値動きを振り返りながら、下落局面で「売った人」と「持ち続けた人」に何が起きたのかを確認し、次の下落に備えて今のうちに決めておきたいことをFPの視点から考えます。
史上最高値から14.5%安、そして1日で4%の急反発
まず、最近の値動きを整理してみます。
日経平均株価は、2026年6月25日に72,366円34銭をつけ、最高値を更新しました。しかし、その後は下落が続きます。7月8日の終値は66,819円05銭。最高値から見ると、すでに約7.7%下がった水準でした。
この時点で、「思ったより下がってきた」「ここで一度売った方がいいのでは」と感じた人もいたかもしれません。その後も下落は続き、7月29日の終値は61,434円19銭となりました。さらに7月30日時点でも61,867円43銭と、最高値から約14.5%安い水準にとどまっていました。
個別銘柄では、半導体関連株の下落も目立ちました。キオクシアホールディングスは7月中旬に一時ストップ安となり、6月につけた上場来高値から半値以下の水準となる場面もありました。最高値を更新した直後の強気な雰囲気から、わずか1か月ほどで不安の方が大きくなっていたといえます。
ところが、7月31日になると日経平均は64,362円02銭まで上昇しました。前日比で2,494円59銭高、上昇率は4.03%です。下がっている間は「まだ下がるかもしれない」と感じ、反発したあとは「売らなければよかった」と感じる。下落と反発の間で、投資家の気持ちは簡単に揺れてしまいます。
投資家が感じた真逆の気持ち
たとえば、7月8日の時点で日経平均を見ていた人がいたとします。6月25日の最高値から、日経平均はすでに約7.7%下がっていました。
「これ以上下がる前に、いったん売っておこう」そう考えて売った人もいたかもしれません。
その後、7月29日には日経平均が61,434円19銭まで下がりました。7月8日よりも、さらに5,000円以上低い水準です。この時点で、7月8日に売った人はこう感じたかもしれません。
「あの時、早めに売っておいてよかった」。
実際、7月8日から7月29日までを見ると、売った判断は正しかったように見えます。含み損の拡大を避けられた。もっと下がる前に逃げられた。そう感じるのは自然なことです。
しかし、その翌々日の7月31日、日経平均は1日で4%を超える急反発となりました。そうなると、人の感情は変わります。
「やっぱり売らなければよかった」
「もう少し待っていれば、戻ったのに」
「どこで買い直せばいいのか」
わずか数週間の間に、同じ判断に対する評価がこうも変わってしまうのです。売った直後は安心する。さらに下がれば正解に見える。しかし、急反発すれば、今度は後悔が出てくる。
売った判断そのものが悪かった、という話ではありません。相場の途中経過だけを見ていると、同じ判断でも、正解に見えたり失敗に見えたりしてしまうことがあるのです。
「今が底か」「今が天井か」は、あとからでないと分からない
下落局面で一番難しいのは、「今が底なのか」が分からないことです。株価が5%下がったとき、それが一時的な調整なのか、さらに10%、20%下がる入口なのかは、その時点では分かりません。反対に、株価が反発したときも、それが本格的な回復なのか、一時的な戻りなのかはすぐには分かりません。
7月8日に売った人は、7月29日までは正解に見えました。しかし、7月31日の急反発を見ると、今度は売らなかった方がよかったように見えます。同じ売却判断でも、どの日を基準に振り返るかで、評価が変わってしまうのです。
ここで注意したいのは、短期の底値や天井を当て続ける前提で投資を考えないことです。もちろん、相場を見ながら売買すること自体が悪いわけではありません。まとまった利益が出ている人、資金が必要な人、リスクを取りすぎていた人にとっては、売却が必要な場面もあります。
ただし、「怖くなったから売る」「上がったから買い直す」という判断を繰り返すと、相場の値動きに合わせて、自分の判断軸も動き続けてしまいます。
問題は、売ることそのものではありません。下落したあとに売るかどうかを慌てて考えていることです。