はじめに
SNSなどで、「学費は奨学金でまかない、手元の資金は新NISAで運用した方がお得」という考え方を見聞きしたことはありませんか。背景にあるのは、奨学金の金利を上回る運用益が得られれば、結果的に資産を増やせるのではないか、という考え方です。
一見すると合理的に思えますが、投資の利益は約束されたものではなく、元本割れする可能性もあります。一方、貸与型奨学金は卒業後に返済しなければなりません。本記事では、こうした考え方が注目される理由と、一概に「お得」とはいえない理由を解説します。
なぜ「奨学金を利用しながら投資する」という考え方が注目されている?
こうした考え方が注目される理由のひとつに、貸与型奨学金の金利があります。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、返済時に利息がつかない第一種奨学金と、利息がつく第二種奨学金があります。第二種奨学金には利率の上限が設けられており、一般的なローンなどと比べると、低い金利で借りられることがあります。
例えば、令和8年7月に貸与が終了した人に適用される第二種奨学金の利率は、利率固定方式で年3.000%、利率見直し方式で年2.000%です。仮に年5%程度の運用リターンを想定すれば、奨学金の金利を上回るため、「学費は奨学金でまかない、手元の資金を運用した方が有利なのではないか」と考えることもできます。さらに、新NISAでは運用益が非課税となるため、こうした考え方に魅力を感じる人もいるでしょう。
そもそも奨学金は何のための制度?
貸与型奨学金は、学生が経済的な理由で進学や修学をあきらめることがないよう、学びを支えるための制度です。JASSOの第一種・第二種奨学金には、家計基準や学力基準などの申込資格があり、希望すれば誰でも利用できるわけではありません。また、貸与型である以上、卒業後には返済が必要です。
一概に運用が有利とはいえない3つの理由
①想定どおりの運用益が得られるとは限らない
先ほど、第二種奨学金の金利と年5%の運用リターンを例に挙げました。しかし、奨学金の金利と投資のリターンを単純に比較することはできません。年5%という運用リターンはあくまで想定であり、毎年5%ずつ増えることが保証されているわけではないからです。長期投資では、運用期間を長くとることで短期的な値動きの影響を抑えることが期待できます。それでも、必要な時期に相場が下落し、運用資産が元本を下回る可能性があります。
②奨学金の返済は長期間、家計の負担になる
奨学金は卒業後も返済が続きます。例えば、4年間で約480万円を借りた場合、JASSOの返還シミュレーションでは、毎月約2万5,500円の返済が約20年間続くケースもあります。※参考値として2026年3月末に貸与が終了した人の利率固定方式を設定した試算で、実際の返済額は借入額や適用利率などによって異なります。
社会人になってからの約20年には、転職、結婚、出産、住宅購入など、さまざまなライフイベントが重なる可能性があります。返済が長期間続けば、家計や資金計画にも影響します。
③運用の結果にかかわらず、奨学金は返済しなければならない
投資では、相場が下落したときに売却せず、回復を待つという選択肢があります。一方、奨学金は卒業後に返済が始まり、決められたスケジュールで返済を続ける必要があります。運用資産が値下がりしていても、奨学金の返済義務がなくなるわけではありません。運用資産から返済するつもりでも、取り崩したい時期に相場が下落していることも考えられます。また、収入減や退職などによって計画が変わる可能性もあります。返済が遅れると延滞金が発生し、一定期間以上延滞すると個人信用情報に登録される場合もあります。