はじめに
メリット3:60歳以降の資産形成で「選択肢を残しやすい」
三つ目は、60歳以降の資産形成について「選択肢を残しやすい」という点です。
確定拠出年金は、原則として60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。受給開始時期には幅があり、現在は75歳までの間で受給開始時期を選択できます。
ここで知っておきたいのが、企業型DCとiDeCoでは、老齢給付金を受け取った後の扱いが異なるということです。
企業型DCの老齢給付金を受給すると、その後、企業型DCに再加入することはできません。例えば定年時に企業型DCの資産を老齢給付として受け取ってしまうと、新たな勤務先に企業型DCがあっても加入できないのです。また定年後継続雇用を選択し企業型DCの加入資格があっても、老齢給付を受け取ってしまうと加入できなくなってしまうことがあります。
一方、企業型DCの老齢給付金を受給した後でも、一定の要件を満たせばiDeCoに加入することは可能です。現在iDeCoは、国民年金被保険者であるなどの条件を満たせば65歳まで加入が可能です。さらに2026年12月からは、国民年金被保険者ではない人でも、一定の要件を満たせば、60歳以上70歳未満でiDeCoによる資産形成を継続できる区分が新設されます。ただし、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をまだ受給していないことが条件となります。
整理すると、iDeCoの老齢給付金を受け取ると、その後iDeCoへの加入はできない。しかし、企業型DCの老齢給付金を受け取っても、iDeCoへの加入は可能ということです。
もちろん「60歳になったら必ず企業型DCを受け取るべき」というわけではありません。ただ、定年前後は、住宅ローンの返済、子どもの独立、住宅のリフォーム、親の介護、自分自身の働き方の変更など、お金の使い道が大きく変わる時期でもあります。
そのため老後資金として積み立ててきたお金を、60歳以降すぐに使うのか、それともそのまま運用を続けるのか。あるいは一部を受け取り、一部を運用に残すのかなど、そのときの生活状況や資産状況によって、選択肢を少しでも多く残しておくことが重要なのです。
そう考えると、企業型DCというカードを持つことで、60歳以降に「受け取る」という選択肢だけでなく、受け取った後にiDeCoを活用して資産形成を続けるという選択肢も視野に入れることができるのは、メリットであると考えます。
「得か損か」の二択で考えない。会社の制度を自分の人生のためにどう使うかという視点
企業型DC、特に選択制企業型DC(給与減額型)では、掛金を増やすことで社会保険料が下がる一方、標準報酬月額が下がれば、老齢厚生年金や傷病手当金などの社会保険給付に影響する可能性があります。前回の記事でも説明したように、「節税になるから」「手取りが増えるから」という理由だけで、掛金をできるだけ大きくするのはおすすめできません。
しかし、制度の注意点を理解することと、制度そのものを避けることは別の話です。会社が用意してくれた企業型DCには、「投資を始めるきっかけになる」「投資を学ぶ機会が得られる」「60歳以降の資産形成についても選択肢を持ちやすい」という、個人で一から資産形成を始めるのに比べて得にくいメリットがあります。
大切なのは、「企業型DCは得なのか、損なのか」という二択で考えないことです。まずは、自分の会社の制度が「事業主掛金型」なのか、自らの給与を減額して掛金を拠出する「選択制」なのか、マッチング拠出はできるのか、どのような運用商品が用意されているのか、投資教育はどのように行われているのかを確認してみましょう。
そのうえで、自分はいくらを老後資金として準備したいのか、今の生活にどの程度の余裕があるのか、そして社会保険による保障も含めて、自分に合った資産形成をどう組み立てていくのかを考えましょう。
企業型DCは、「会社が用意してくれたから、とりあえず加入する」制度ではありません。会社に用意された制度を、自分の人生のためにどう使うのか、その視点を持って活用することが、これからの企業型DCとの上手な付き合い方ではないでしょうか。
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