はじめに
2024年に新NISAがスタートしてから、資産運用はぐっと身近になりました。金融庁によると、NISAの口座開設数は2025年12月末時点で約2,820万口座。単純計算すると、18歳以上のおよそ4人に1人が口座を持っていることになります。
一方で、NISAがこれだけ普及しても「損をするのが怖い」「本当に投資して大丈夫?」と、一歩を踏み出せない人もいるでしょう。
そこで今回は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」の生みの親である代田秀雄さんに、NISAで投資することへの不安や疑問の声をぶつけてみました。
出典:NISA口座の利用状況に関する調査結果の公表について(金融庁)より「NISA口座の利用状況(令和7年12月末時点)」

三菱 UFJ アセットマネジメント前常務。シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ代表。
1985 年に三菱信託銀行(現・三菱 UFJ 信託銀行)に入社。支店にて個人財務相談や法人融資などを担当した後、年金資金や投資信託の運用業務に約 30 年にわたり携わる。三菱 UFJ 投信で商品企画部長などを歴任し、2019年より三菱 UFJ 国際投信常務取締役として商品・マーケティング部門等を所管。インデックス投資を通じて、資産形成や NISA の普及に貢献した。2025年4月、三菱 UFJ アセットマネジメント常務取締役を退任し、特別業務顧問に就任するとともに、シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズを設立。中央大学法学部兼任講師(国際金融論)。人気投資信託シリーズ「eMAXIS Slim」、なかでも「オルカン」の生みの親として、メディアでたびたび取り上げられている。
「世界経済は成長する」って本当?
──NISAでの投資をすすめる人は、「長期的には世界経済が成長する」という前提で話をしています。でも、将来のことは誰にもわかりませんよね。本当に成長が続くものでしょうか?
逆に、「世界中の企業や人々が新しい商品やサービスを生み出すことをやめ、10年後、20年後の社会が今より不便になっている」将来のほうが、想像しにくいのではないでしょうか。
資本主義社会では、企業は利益を求めて投資し、新しいビジネスや技術を生み出し、生産性を高めようとします。もちろん、景気後退や金融危機、地政学リスクなどによって、一時的に成長が鈍化したり、株価が大きく下落したりすることはあります。国や企業によって、成長の度合いにも差が出るでしょう。
それでも、企業や人々がよりよい商品やサービスを生み出そうとする活動はこれからも続いていくのではないでしょうか。長期的な経済成長
──たしかに、10年後はもっとすごいスマホとかAIが出ていそうです
そう思うでしょう? もちろん、ずっと順調に成長していくとは思えません。実際、ここ数年はトランプ関税による貿易問題、中国経済の減速、中東情勢の悪化といった経済停滞要因が発生しています。しかし、それでも世界全体の実質GDP(国内総生産)はプラス成長を続けています。
IMF(国際通貨基金)が2026年7月に公表した「世界経済見通し改訂版」では、世界経済の実質成長率を2026年3.0%、2027年3.4%と予測しています。今後も短期的な株価下落や景気後退はあるでしょう。それでも長い目で見れば、世界経済は成長していくと考えるのが自然です。だからこそ、これから成長する国や企業を当てにいく投資ではなく、世界全体に広く分散投資して市場に参加することに意味があるのです。
元本割れが怖くて、NISAを始められません
──投資したお金が減るのが怖く、なかなか最初の一歩が踏み出せません
元本割れが怖い気持ちはよく分かります。ただ、そもそも投資でリターンが期待できるのは、不確実性、つまりリスクがあるからです。元本が保証されている商品で、株式投資と同じようなリターンを期待することはできません。資産価値が上下に変動するリスクを引き受けるからこそ、その対価としてリターンが期待できるわけです。
ただし、長期で投資をすれば値動きがなくなるわけではありません。株式市場は短期的には大きく上下します。長期投資とは値動きを完全に避けることではなく、日々の変動に振り回されず、時間をかけて世界中の企業の成長に参加していくという考え方です。
大きく値下がりする局面もあることを前提に、長く使わないお金で市場に居続ける。その結果、世界経済が成長したときに、その果実を受け取れるようにしておく。これが長期投資の基本です。
一方で、物価高が続く時代には、現預金だけを持っていれば安心とも言い切れません。預金の額面は変わらなくても、物価が上がれば、同じ100万円で買えるモノやサービスは少なくなります。
投資には元本割れのリスクがあります。しかし、投資をしないことにも、インフレによって資産の実質的な価値が目減りするリスクがあります。預貯金で今の生活を守るお金を確保したうえで、長く使わないお金については、将来の購買力を守るために投資を活用するという考え方が大切です。