はじめに

【記事の要点】
・上場企業の2027年3月期配当総額は23兆円と6年連続で最高を更新する見通し
・東証の「投資単位50万円未満」の再要請を受け、9月末に47社が株式分割を実施
・東京海上や地銀などの大型分割により最低投資額が下がり、個人が買いやすい環境へ

日本企業の株主還元姿勢が、かつてないほど強まっています。投資家にとって「配当金」や「株主優待」は大きな楽しみですが、その一方で、「最低投資額が高すぎて手が出せない」と悩む個人投資家は少なくありません。

しかし、東証が掲げるルール変更や企業の積極的な対応によって、そのハードルが下がりつつあります。今回は、過去最高を更新する配当総額の現状と、9月末にピークを迎える「株式分割ラッシュ」の背景、株式分割をする企業を解説します。


6年連続で最高へ! 配当総額23兆円と進む株主還元

先日、日本経済新聞社が、上場企業の2027年3月期の配当総額は前期比6%増の23兆円と、6年連続で過去最高となる見通しを公表しました。

2023年の東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請により、日本企業の株主還元が急速に進み、配当を引き上げる企業が増えています。配当総額を増やすと自己資本が減少するため、ROE(自己資本利益率)は上昇しやすくなります。これは、東証の要請に応じたことにもなるため、企業側も積極的に取り組んでいます。

ただし、利益を伴わない過度な配当や、見栄えを良くするためだけの無理な増配は、中長期的な財務基盤を損なう恐れがあります。一時的な高配当に惑わされず、企業業績や財務の健全性をしっかりとチェックする必要があります。

なぜ株式分割が急増?東証が求める「50万円未満」の要請

配当の増加と並んで、個人投資家にとって大きな追い風となっているのが「株式分割」の動きです。東証は2022年10月に、株を購入するための投資単位(最低金額)を「50万円未満」に抑えるよう、全上場企業に要請しました。これに対し、企業側は株式分割によって対応することになります。

株式分割とは、企業があらかじめ定めた分割比率に従って、1株を複数株に分割することです。たとえば、2分割の場合は1株が2株に、5分割の場合は1株が5株に分割され、分割比率に応じて株数が増えていきます。1株10,000円の株が2分割された場合、理論株価は1株5,000円となり、同様に5分割された場合は1株2,000円に下がります。これにより、それまで100万円必要だった最低投資額が、それぞれ50万円、20万円へと引き下がることになります。企業の発行済株式数は増えますが、理論上の時価総額は分割前後で変わりません。

しかし、依然として最低投資金額が50万円以上となる企業が多かったこともあり、東証は2026年7月、投資単位の大きい上場企業に向けて株式分割を改めて要請しました。

東証が株式分割を要請する主な理由としては、個人投資家が株を買いやすい環境を整え、市場の活性化や流動性を高めることが挙げられます。また、米欧などの海外市場に比べ、日本企業は相対的に1単元の購入金額が高い傾向にあることも背景にあります。

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