はじめに
「お金があれば、もっと幸せになれる」そう考える人は少なくないでしょう。お金を貯め、収入をアップし、資産を増やし、欲しかったものを手に入れて、幸せを感じることは多々あります。
一方で、幸福感を高める方法は、お金を増やして「自分のために使う」ことだけではありません。心理学や行動科学の研究では、他人のためにお金を使う「向社会的支出」により、幸福度を高める可能性が示されています。
現在、社会人大学生として心理学を専攻し、幸福感やお金について研究をしている筆者が、「お金と幸福」の少し違った関係についてお届けしたいと思います。
「他人のためにお金を使う」と幸福度が上がる傾向に
「向社会的支出」とは、他人のためにお金や自分の資源を使うことです。世界的にも、向社会的支出と幸福度の関係を調べた論文が多数あります。
2023年にChen氏により発表された研究レビューでは、向社会的支出と幸福度の関係を調べた14の実証研究を検討しています。文化や属性などによる違いはあるものの、他人のためにお金を使うことが、幸福度にプラスの影響を与えるという研究結果が積み重なっているとされています。
参考文献:Chen, Y. (2023). Better to give? A systematic review of prosocial spending and happiness. Scandinavian Journal of Psychology, 64(6), 838–848.
つまり、同じ1,000円や1万円でも、自分のために使って喜びを得るだけでなく、誰かのために使うことで、また違った形の幸福感や満足感を得られる可能性があるわけです。例えば、お世話になっている人への贈り物や、日ごろ一緒に過ごしている家族へのプレゼント、義援金や寄附金なども、その一例といえるでしょう。
ただ、物価高が続く今、自分のためにも人のためにも、「使えるお金」には限界があるものです。そこで考えたいのが、「お金を使わずに誰かの役に立つ」という選択肢です。
「お金を使わない」人助けもある
その一つにあげられるのが、「献血」です。筆者は、コロナ禍の2020年に献血者が不足しているニュースを見たことをきっかけとして、献血に行くようになりました。
献血には、血液をそのまま採血する「全血献血」と、血小板や血漿などの成分を採血する「成分献血」があります。献血された血液は輸血用血液製剤などに加工され、医療現場で使われています。
ただし、血液製剤の有効期限はかなり短いそう。日本赤十字社によると、赤血球製剤は採血後28日間、血小板製剤は6日間、全血製剤は21日間です。血液製剤は長期保存できないケースが多く、医療に安定して届けるために多くの人の継続的な献血が必要なのです。
献血には、健康状態や体重、過去の病気、行動履歴など、さまざまな基準が設けられています。献血経験者は、前回の献血からの間隔や年間回数などの基準もあります。事前の検査や問診を経て、安全が確認された場合に献血ができる仕組みです。
献血にかかる時間は、献血方法や会場によって異なります。筆者の場合は、全血献血なら40分~1時間ほど、成分献血なら、2時間以上の時間の余裕を見て予約しています。
採血時には、注射による痛みも多少あります。筆者は痛がりなので、何度経験しても慣れません。それでも献血を終えると「誰かのために役立てたかな」と思い、前向きな気持ちになります。
献血会場には、献血を通じて誰かの役に立ちたいという思いを持った人が集まっているからか、いつも温かい空気が流れているように感じます。筆者の感覚ですが、お金を使わなくても、誰かの役に立つことで得られる満足感や幸福感は、確かにあると感じています。
さらに、献血の日に向けて、食事や睡眠などに気をつけ、体調を整えようと思うため、自然と健康を意識するようになります。当日は、献血前の水分補給のためのドリンクを好きなだけ飲めたり(会場によって異なります。水分をたくさんとることが推奨されています)、ポイントがたまるとグッズをもらえるなど、ちょっとした楽しみもあります。
お金を使わずに誰かの役に立てることで得られる満足感や幸福感と、そこに自分の健康を見つめなおすきっかけや、楽しみも加わるのです。