はじめに
GPIFの「国内債シフト観測」も円高材料に

さらに市場で意識されているのが、GPIFをはじめとする国内機関投資家の資金配分です。
GPIFは約318兆円の資産を運用する世界最大級の年金基金です。基本ポートフォリオでは国内債券、外国債券、国内株式、外国株式をそれぞれ25%としています。
現時点でGPIFが基本ポートフォリオを大幅に変更すると正式に決まったわけではありません。政府関係者も7月時点で、直ちに資産構成を抜本的に変更する予定はないと説明しています。
ただ、日本の10年国債利回りが一時3%を超えるなど国内債券の利回りが大きく上昇したことで、日本の投資家にとって、海外債券へ積極的に資金を振り向ける必要性が低下しています。
仮に海外資産から国内債券への資金回帰が進めば、海外資産を売却して円を買うフローが発生します。
つまり今回の円高は、単なる投機筋の動きだけではなく、日本の長期金利上昇によって国内外の資金配分そのものが変化する可能性を、市場が織り込み始めた側面があります。そこが今回の円高を考えるうえでかなり重要なポイントだといえそうです。
9月FOMCは利上げとその後の政策見通しが焦点
今後のドル円を左右する最大のイベントが、9月15、16日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)です。今回は経済・金利見通しをまとめたSEP(経済見通し)も公表されます。8月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比16万2,000人増となり、市場予想の5万6,000人程度を大きく上回りました。失業率も4.1%で横ばいでした。この結果を受け、9月FOMCで0.25%の利上げが行われる確率は6割前後まで上昇しています。
ただし、FOMCを考えるうえで雇用統計以上に重要になりそうなのが、直前に発表される8月の米CPI(消費者物価指数)です。市場では総合CPIが前年比3.4%程度、コアCPIが2.4%程度になるとの予想があります。中東情勢を背景とした原油高もあり、FRBにとっては非常に難しい局面です。景気や雇用が大きく悪化していない一方、インフレが再加速すれば、利上げを見送る理由は弱くなります。
個人的にはFOMCでは、「利上げするか、しないか」だけを見るのでは不十分だと考えています。
注目したいのは、①今回の利上げの有無、②ドットチャートで年内の追加利上げがどこまで示されるのか、③ケビン・ウォーシュFRB議長がインフレの上振れリスクをどの程度警戒するのか、の3点です。利上げが行われても、その後の追加利上げに慎重な姿勢が示されればドル高は限定的になる可能性があります。
反対に、利上げに加えてドットチャートなどの見通しでも追加利上げが示されれば、米金利が再び上昇し、一度進んだ円高が巻き戻される展開も考えておく必要があります。
さらに11月の中間選挙を控え、次回10月会合は投票日の直前となるため、追加利上げが必要な場合、9月会合は比較的動きやすいタイミングの一つとみられています。ジャクソンホール会議でケビン・ウォーシュFRB議長はタカ派寄りの発言をしており、その後、トランプ大統領はFRBに対して利下げを強く求める姿勢を見せています。FRBの独立性という観点からも、9月のFOMCは注目だと言えます。