はじめに

米10年国債利回りが5%を超える一方、米国株は最高値を更新しています。金利上昇は株価の重しになるはずなのに、なぜ株高が続いているのでしょうか。その背景にある企業利益の成長を整理し、2007年との比較やAI投資の収益性、ROIC、財務体質などから、高金利環境で企業を評価する際のポイントを解説します。日本の金利上昇が企業経営に与える影響についても考えます。


米長期金利5%超と米国株最高値の同時進行

2026年秋、米国では長期金利の上昇が改めて市場の大きなテーマになっています。10月7日の米債券市場では長期金利の指標となる米10年債利回りが一時5.36%と、2002年以来の高水準に達しました。

一方、米国株はAI関連株を中心に高値圏を維持し、今週はNASDAQ総合指数、S&P500ともに過去最高値を更新しています。高金利なのに株高という状況です。金利が上がると株価の重しになるはずなのに、なぜ株価が上がっているのか、疑問に思われている方もいるはずです。

この問いを考えるとき、金利の水準だけを見るのでは不十分です。企業利益の成長、信用環境、財務体質、資本効率、そして市場がどこまで将来の成長を織り込んでいるのか。これらを合わせて考える必要があります。

ただ、投資家として考えたいのは、高金利でも株価が上がっていること自体ではありません。なぜ株式市場が金利上昇に耐えられているのか、そしてその前提がどこまで続くのかです。

金利上昇による株価への下押し圧力と企業利益の成長

まず押さえておきたいのは、金利上昇は基本的に株式のバリュエーションにとって逆風になるということです。

株式の価値は、将来生み出す利益やキャッシュフローを現在価値に割り引いて考えます。金利が上がれば割引率も上がりやすくなるため、将来の利益の現在価値は低下します。

特に影響を受けやすいのが、現在の利益よりも数年先の高い成長を織り込み、高いPERで評価されているグロース株です。

企業の資金調達にも影響します。借入金が多い企業では、金利上昇によって支払利息が増える場合があります。設備投資やM&Aの採算基準も厳しくなり、借り換えのタイミングで調達コストが大きく上昇するケースもあります。

こうした点だけを見れば、「金利上昇は株価にマイナス」という考え方には合理性があります。

それでも株価が上昇できる理由は、株式市場を動かすもう一つの重要な要素である「企業利益」が伸びているからです。金利上昇のマイナスを上回るペースで利益が成長すれば、株価は上昇することができます。

現在の米国市場では、この構図がかなり鮮明です。2026年第3四半期のS&P500構成企業の利益は、前年比で3割前後の増益が見込まれています。2026年通年でも大幅な利益成長が予想されています。

つまり現在は、「金利上昇によるバリュエーションへの下押し圧力」と「企業利益の成長」が綱引きをしている状態と考えることができます。

2007年の株高と金融危機前に広がった信用不安

この構図を考えるうえで参考になるのが2007年です。米10年国債利回りは2006年から2007年にかけて5%台まで上昇しました。それでも株式市場はすぐに下落したわけではありません。S&P500は2007年10月に当時の史上最高値を更新し、NASDAQ総合指数も2007年年間では上昇しました。つまり、過去を振り返っても10年債利回りが5%を超えたら株式市場は必ず下落するというわけではありません。

ただし、2007年を金利5%でも株は大丈夫だった例として捉えるのは危険です。

当時は株価が上昇する一方、住宅市場ではすでに悪化が始まり、サブプライムローン問題や金融機関の信用不安が徐々に広がっていました。2007年10月の高値は、結果的に金融危機前の株価ピークとなりました。ここから得られる教訓は、高金利そのものよりも、高金利によって経済や企業のどこにひずみが生じるかを見る必要があるということだと思います。

住宅市場なのか、消費者信用なのか、銀行なのか、商業用不動産なのか、企業の資金繰りなのか。利益成長の前提が崩れ、信用収縮が始まれば、市場のテーマは「高金利でも景気が強い」から「高金利によって景気と企業業績が悪化する」へ変わります。

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