はじめに
・米国債の利回り5%超えを機に債券ETF・投資信託や個別の米国債への注目が増大
・NISAで買える債券ファンドには満期がなく金利上昇による元本割れリスクが存在
・使う時期が決まっている資金は満期で元本が戻る「個別の米国債」が有効な選択肢
米国債の利回り5%突破といったニュースをきっかけに、「安全とされる国債で高い利回りを得られるなら活用したい」と関心を持つ方が増えています。
しかし、NISA口座で手軽に買える「債券ETF・投資信託」を通して購入する場合と、証券会社で「個別の米国債(生債券)」を購入する場合とでは、商品の仕組みやリスクの現れ方が大きく異なります。
本記事では、両者の仕組みやリスクの違いをわかりやすく解説し、資金の目的に合わせた運用の考え方を整理します。
1. NISAで購入できる「債券ETF・投資信託」の特徴と注意点
ネット証券のNISA口座(成長投資枠)を開くと、さまざまな「債券ETF・投資信託」が並んでいます。さらに2027年1月からは「つみたて投資枠」でも一部の債券型投資信託が対象に加わる予定となっており、非課税枠を活用して手軽に少額から運用できる魅力があります。
ただし「非課税で買えるから」と安易に選んでしまうと、「安全にお金を管理したい」という目的にそぐわないケースが出てきます。その背景には、債券投資の基本である「金利と価格のシーソーの関係」があります。
2. 債券と金利の「シーソーの関係」とは?
債券には、「金利が上がると、債券の本体価格が下がる」という絶対的なルールがあります。
たとえば「利回り5%」のタイミングで債券ETF・投資信託を購入した後に、米国の金利がさらに上昇したとします。すると市場での債券価格が下がり、投資信託の基準価額(本体価格)も購入時を下回って含み損を抱えることになります。
ここでポイントになるのが「満期の有無」です。
個別の米国債であれば、途中で金利が上がって価格が下がっても、満期まで持ち続ければ「額面」の金額がドルで全額戻ってきます。額面とは債券に記された金額のことで、満期に国が返すと約束している金額です。たとえば額面100ドルの債券なら、途中でいくら値下がりしても満期には100ドルが戻ってきます。
一方で、債券ETF・投資信託にはそのような仕組みは存在しません。言い換えると、債券を取り扱う商品でありながら元本保証ではない、ということです。
そのため、債券ETF・投資信託では、資金が必要になって解約する際、金利環境によっては元本割れの状態で売却せざるを得ないリスクがあります。この点、リスクの程度こそ異なりますが、原理は株式に投資するETFや投資信託と同じといえます。
3.「個別の米国債」の特徴と仕組み
「5年後に使う」など時期が決まっているお金の管理において、比較対象となるのが個別の米国債です。
債券ETF・投資信託と異なり、個別の米国債には、必ず「満期(償還日)」が存在します。たとえば「残存期間5年」のものを購入し満期まで保有した場合、途中の価格変動に関係なく、アメリカ政府から「額面の全額」と「あらかじめ定められた利息」を受け取ることができます。ただし、米国債は世界で最も信用力が高い安全資産の一つとされていますが、米国にデフォルト(国が破綻して支払いが滞る)リスクが無いと断定することはできません。
このように、ドルベースでの償還スケジュールや利回りの見通しを立てやすい点が、個別の米国債の大きな特徴といえます。ただし、注意が必要なのは「為替変動リスク」です。債券ETF・投資信託と同様に、換金時に大きく円高が進んでいた場合、円換算で元本を割り込む可能性があります。
また、個別の米国債の購入は、NISA対象外となり課税口座での取引が必要です。そのため為替差益と利子に対しては約20%の税金がかかることも確認しておきましょう。