はじめに
日経平均株価がなんとも軟調な中、タカラトミー(7867)の株価があと一歩で上場来高値にタッチしそうな位置まできています。10月30日は前日比11.66%高の4,922円で終え、年初来高値を更新しました。上場来高値は2025年2月の5,119円で、そこまであと約4%です。5月1日の安値2,496円からは、ほぼ2倍になりました。タカラトミーにいったい何が起こっているのでしょうか?
通期営業利益300億円へ上方修正、売買高は倍増
株価上昇加速のきっかけは、10月29日の大引け後に出た業績予想の修正です。通期の営業利益予想は260億円から300億円に上がり、前期比23.7%増になりました。上期(4~9月)の営業利益予想も、115億円から163億円へ大きく上がっています。その直前まで株価がやや調整気味だったこともあり、絶妙なタイミングのポジティブサプライズとなりました。修正前の日々の売買高は、60万株程度でしたが、翌日以降は倍増。年初来高値をつけた10月30日は、267万株にまで膨らんでおり、投資家熱の高まりが感じられます。
第1四半期の営業利益は55.1億円(前年同期比19.9%増)。ただ、米国で処理された関税の還付が約10億円含まれていて、還付を除くと前年の45.9億円とほぼ同じです。上期予想の163億円から第1四半期の55.1億円を引くと、7~9月の営業利益は約108億円で、前年同期比で約51%増の計算です。還付だけでは説明できない力強い加速といえます。
強さの理由は、大人向けと海外
会社が修正の理由に挙げたのは、キデイランドの人気キャラクター商品、ガチャ、BEYBLADE X、デュエル・マスターズ、トミカ、アジアでの販売増です。共通するのは、子ども向けだったおもちゃが大人にも売れていること、そして海外で伸びていることです。
大人向けの代表がトミカプレミアムです。2015年に始まった大人のためのトミカで、専用の金型で作られています。価格は基本の1台が990円(税込)で、通常のトミカ594円の約1.7倍。映画やアニメの車を再現した派生シリーズもあり、高価格帯では22万円の限定品まであります。会社によると、国内の累計販売は2,500万台以上(2026年6月時点、派生シリーズを含む)、購入者の約6割が大人で、2025年の出荷は2015年度の約6.5倍です。12月には、今年2回目となる大人ファン向けのイベント「TOMICA OWNERS MEETING」が開催されるとのこと。どんな人たちが集まるのか、こっそり覗いてみたい気もします。
ベイブレードも、日本のユーザーの約3割が大人で、年間1万回以上の体験会が開かれているといいます。海外ではアジアが先行し、香港や台湾でBEYBLADE Xが伸びました。トミカのブランドストアも、5月に香港で5店舗目を出しています。キデイランドは、4月に開いた原宿の新店舗に加え、訪日客の需要も取り込んでいます。
強みは、長く育てたIPと遊びが続くしくみ
タカラトミーの特徴は、自社で長く育ててきたブランドの厚みです。プラレールは1959年に原型が生まれ、リカちゃんは1967年、トミカは1970年、ベイブレードは1999年に誕生しました。トミカは2024年12月に、累計販売台数が10億台を超えています。
同社の強さは、世代をまたいで買われるIPを持っていることです。子どもの頃にトミカに熱中したファンが大人になり、単価の高いトミカプレミアムを買う。ベイブレードは、大会に向けてパーツを選び、仲間と対戦する遊びが買ったあとも続きます。わたしでいえば、子どもの頃にお年玉で買った「こえだちゃんと木のおうち」を、娘たちにも買い与え、懐かしさに胸アツになりながら一緒に遊んだものです。
長く愛されるようIPを丁寧に育て、大人向けの商品や体験を提供し、稼ぐ力を着実につけているのはおいそれと真似できるものではありません。おもちゃメーカーは、少子化の影響で先細りと短絡的にイメージしてしまいますが、タカラトミーに限っていえば「子どもがいなければ、大人がいるじゃない」といった姿勢で邁進しているようです。