はじめに

食べ比べへの対応を強化

イオンでは1年かけて、節分に向けた準備を重ねてきました。今年は恵方巻きの数量構成にもこだわります。「いろいろな太巻きを食べ比べしてほしい」と、全体に占めるハーフサイズの割合を昨年の3割から今年は4割に引き上げました。

「黙って恵方を向いて食べきるよりも、食べ比べるのが今の楽しみ方。バレンタインのように楽しみ方が多様化してきていると感じています」と、イオンリテール広報部の高濱海穂さんは話します。

恵方巻きに使う、すし酢や海苔にも気を配ります。文化や食材の違いによって生じる味の好みを考慮し、各地方のお客さんの口に合うよう、7種類の酢を使い分けています。

「関東では酸味の立ったさっぱりした味付けに、関西では甘みの強い若干濃い味付けにしています」(同社の西野克デリカ商品部長)

子供やお年寄りには噛み切りづらいといわれる海苔は、全体に細かい穴を開け、噛み切りやすくし、噛んだときに食感や風味をがより豊かになるように仕上げました。

店頭に並ぶのは2月2日と3日。本州・四国の約400店舗とネットスーパーで最大19種類の恵方巻きを販売します。事前予約は1月29日までです。

高価格帯人気の背景にあるのは?

3~4年前から年々過去最高の売上高を記録しているイオンの恵方巻き。特に売れ行きが良いのは、ミシュラン3つ星店監修の恵方巻きや旬の海鮮太巻きといった高価格帯のものだそうです。

同様の傾向は大丸東京店でも見られます。一番の売れ筋である海鮮巻きの中でも、高単価のもののほうが売れているといいます。

「百貨店側から仕掛けているところもあるので、値段は少し高めになることはありますが、それに対してお客様から『高すぎる』といった声はありません。ここぞとばかりに楽しんでいらっしゃいます」(大丸東京店の鈴木マネジャー)

高単価な恵方巻きが売れる背景について、流通コンサルタントの生地(おち)雅之さんは次のように考察します。

「売り手としては、人口減少が進む中で1人当たりの購入額を上げていきたいという狙いがあります。一方、健康志向の高まりもあり、本当にいいものであればお金をかけたいと思っている買い手は少なくありません。両者の思惑が合致した結果が、高価格帯の商品が売れている理由ではないでしょうか」

今年の節分は土曜日。平日よりもファミリーでの需要が見込めるとあって、各社とも例年にない力の入れようです。この流れに乗って、いつもは食べないような恵方巻きにチャレンジしてみると、面白いかもしれません。

(文:編集部 土屋舞)

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