はじめに

2人ともフルタイムで働いているのに、自分のほうが圧倒的に家事量が多いと不満を漏らす妻。自分だって仕事が忙しいし、手伝っても「できていない」と余計に妻を不機嫌にさせるのが怖くて、家事を手伝わない夫――。

共働き世帯が増加傾向にある中で、よく問題となるのが「夫婦間での家事分担」です。お互いに不満が溜まり、本当に大事な家事分担の話し合いがなかなか進まない、ということも多いのではないでしょうか。

しかし、魚心あれば水心。そんな日本の共働き夫婦が抱える“冷戦構造”を解決してくれるかもしれないアプリが登場しました。その実力はいかほどなのでしょうか。


話し合いながら家事を分担するツール

昨年12月にリリースされた、家事分担サポートアプリ「Yieto(イエト)」。大きな特長は2つあります。

1つは、妻の頭の中にある約130の家事タスクを「見える化」して把握できる点。アプリには、あらかじめ細かく分けられた家事タスクが登録されており、どの家事を誰がやっているのか、家族間で確認することができます。


さまざまな家事を細分化し、どのタスクを誰がやっているかを「見える化」

特にYietoが優れているのは、普段の生活では意識しにくい家事までタスクの中に入れてある点。たとえば、ゴミ捨てといわれた場合、多くの男性は「玄関にまとめてあるゴミ袋をゴミ捨て場に持っていく」というタスクを想像しがちです。

しかし実際には、各部屋のゴミ箱のゴミを1ヵ所に集め、分別し、ゴミ箱が汚れていたら洗い、新しいゴミ袋をかぶせ、ゴミ袋をゴミ捨て場に出す、という複数の工程が存在します。どれも些細なようで大切な作業です。

ここに、それぞれの家庭特有の家事タスクを加えれば、自分の家庭オリジナルの家事一覧を作成できるのです。

もう1つの特長が、現在の家事の分担状況をマップ形式で表示してくれる点。妻が赤、夫が青、2人で担当している家事タスクが黄色で表示されるので、それを見ながら夫婦で話し合い、家事の再分担ができるという仕組みです。


家事の分担状況が示されたマップ

夫婦のどちらかが変更を加えれば、その内容がもう1人の端末にもリアルタイムで反映されます。タスクが完了したことを登録すると、即座に相手にも伝わり、その後のコミュニケーションが円滑になるように、という心遣いからです。

ワーキングママの不満から誕生

Yietoを開発したのは、東京・吉祥寺にあるインターネットコンテンツ制作会社・フラップ。従業員のほとんどは、お子さん持ちのワーキングママです。

女性が多く働く職場ということもあってか、夫婦間での不満が職場の話題になることも多かった、と同社の小沼光代代表は言います。こうした不満を解消するアプリを作ればビジネスになるのではないか。そんな発想からYietoは生まれました。

アイデアが固まったのは昨年2月のこと。それから半年近くを市場調査やサービスの設計に費やしました。特にこだわったのが、家事タスクのチューニングです。

タスクを細分化しようとすればできましたが、細かくしすぎると夫婦間で意識が共有しにくい。程よい具合にタスクを切り分けることに細心の注意を払ったといいます。

9月にアプリ開発が始まると、そこから一気にスピードアップ。担当したエンジニアが4人の子持ちだったこともあり、彼のアイデアを参考にしながら、1ヵ月半でアプリが完成しました。

Yietoというネーミングは「家と〇〇」、たとえば家と私、家とパートナーなど、家だけでなく人とのつながりを重視するという意味があります。「Y」というアルファベットが左右のバランスが取れていることから、「家事分担にもバランスを」という願いも込めたそうです。

見落としがちな家事に気づくきっかけ

リリースして1ヵ月ほどですが、ユーザーからはさまざまな声が寄せられています。ある夫婦は旦那さんが奧さんに感謝してくれるようになったといいます。

たとえば、お手洗いのタオルを替える、というのも見落としがちですが、立派な家事の1つ。誰も替えなければ、タオルは不衛生な状態で放置されてしまいます。Yietoで家事の内容をお互いに把握するようにしたことで、「こんなこともしてくれていたんだ」と旦那さんが気づくきっかけになったといいます。

家事をしてもらっている側はなかなか気づきにくいもの。でも、誰かしてくれている人が必ずいることを意識したことで、お互いに感謝を忘れなくなったそうです。

育児休暇から復帰予定の別の女性は、家事分担を2人で話し合うきっかけになったといいます。事前に分担について話し合うことで、安心して職場に復帰することができたそうです。

また、夫婦双方が日頃から家事に慣れておくことで、夫が定年退職した後に家事がまったくできず、妻のお荷物になってしまう、という悲惨な事態を避けられる効果も期待されます。

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