はじめに
4月に控えたレゴランド・ジャパン・ホテルやシーライフ名古屋の開業、東京ディズニーリゾート35周年や明治維新150周年の関連イベント……。今年も日本各地で観光してみたいイベントが数多く予定されています。
気になる旅行先があったとき、皆さんはどうやって予約しますか。まずは楽天トラベルやじゃらん、エクスペディアといったOTA(オンライン専業の旅行会社)で調べることが増えてきているのではないでしょうか。
オンラインで宿や交通機関を予約するのが当たり前となりつつある中、あのJTBが重い腰を上げました。同社が打ち出した新しい旅行商品は、利用者にとってどんなメリットがあるのでしょうか。そして、後発のJTBに勝算はあるのでしょうか。
プラン数は従来比4~5倍に大幅増
JTBは1月25日から、価格変動型の新商品「ダイナミックJTB」の販売を開始しました。
ブランド名の“ダイナミック”が意味するのは、ダイナミックパッケージのこと。利用者が航空券やJRといった交通手段と宿泊施設を自由に選んで組み合わせることができる旅行プランです。OTAや航空会社系列の旅行会社が得意とする商品で、ネット販売が主流になっています。
今回誕生したダイナミックJTBでは、プラン数をこれまでの価格変動型商品の4~5倍と大幅に拡大。自由度の高いプランを数多く用意し、多様化するニーズに対応できるのが特長です。パンフレットは作らず、需要動向に応じた料金で販売します。
JTBではこれまで、提示された中から利用者が飛行機のフライトや客室のグレードを選ぶ商品が主力でした。これがダイナミックパッケージでは、自分に合った条件で自由にフライトや客室を選べるようになります。
ネット販売のため「急に休みが取れたからどこかに行きたい」と思い立った時、すぐに旅行を手配できたり、コールセンターやJTB取り扱い店でも販売しているので「個人手配は少し不安」という旅慣れない人でも安心して予約できる、といった利点もあります。
他にはない“JTBならでは”の強み
ただ、ダイナミックパッケージはすでに楽天トラベルをはじめ、じゃらん、エクスペディアといったOTAの主力商品として定着しています。利用者があえて今、JTBを選ぶメリットは何でしょうか。
JTBには「他社にはない強みがある」と指摘するのは、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんです。
「JTBが得意とするユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)やレゴランド・ジャパンといったテーマパークの優先入場や、旅先でのオプショナルツアーの充実、そしてそれらをワンストップで予約できる点は、JTBならではの付加価値です」
宿側のメリット高めてプラン数増加
これまでも、JTBは「エーススペシャルセットプラン」という価格変動型の商品を販売していました。各プランが販売終了に近づくと、在庫処分のため、JTBが価格変更を行い、廉価商品として販売してきました。
しかし、ダイナミックJTBでは、4月末発売分から、宿泊施設側が自由に価格変更を行えるようになります。この方式だと、宿側のメリットが大きくなるのです。
というのも、宿泊施設の売り物は客室なので、宿泊客がいなければ空き部屋が“在庫”になってしまいます。在庫といっても客室なので、家電や日用品のように翌日に販売することはできません。
そのため、宿泊施設が自分たちで価格を変更できるようになると、予測を基に需要が少なそうな時は宿泊料金を下げ、逆に需要が高まりそうな時に宿泊料金を引き上げ、収益の最大化を図れるようにになります。
宿泊施設にもメリットがあれば、それだけ多くの宿をラインナップにそろえることができます。これが従来比4~5倍というプラン数の大幅拡大につながった一因だと考えられます。
成否のカギは「サイトの使いやすさ」
利用者と宿泊施設の双方に利点がある方式に切り替えたJTB。先行する楽天トラベルやじゃらんを相手に、どこまで巻き返せるのでしょうか。カギを握るのは「予約サイトの使いやすさ」だと鳥海さんは指摘します。
予約の際に入力作業がスムーズにいかないのは、旅行者にとって大きなストレスになります。ライバルの楽天トラベルは、楽天IDがあれば入力の手間が半分以下になるうえ、楽天ポイントも付与されます。いかに手間をかけずに予約ができるかが、今後の明暗を分けるとみています。
「JTBの強みであるオプショナルプランをしっかり売っていくこと。そのうえで『航空券やJR+宿泊』に関しては、楽天トラベルやじゃらんと同額を提示できないと厳しいのではないでしょうか」(鳥海さん)
他にはない付加価値をどこまで訴求できるのか。そして、他社以上の料金の安さを提示できるのか。後発のJTBが巻き返しを図るには、2つのハードルをクリアする必要がありそうです。
(文:編集部 土屋舞)