はじめに

アマゾン、グーグル、マイクロソフトの業績が絶好調です。3社とも伸びているのはクラウド事業。今、米国のIT大手にとっては、この事業が最大の成長部門であり、稼ぎ頭になっています。

その中でも勢いがいいのがアマゾンなのですが、直近の各社の業績発表を見ていて、気になる言葉を発見しました。「逆アマゾン効果」という言葉です。

アマゾンやグーグルには「ある事情からデータを預けたくない」という企業群があって、その需要がマイクロソフトに流れているという話です。いったいどんな事情があるのでしょうか。


好業績が続くクラウド3強

アマゾン・ドット・コムが2月1日に発表した、2017年10~12月期決算。売上高は前年同期比38%増の604億ドル(約6.6兆円)、純利益は同2.5倍の18億ドルと過去最高を更新しました。

中でもクラウド事業は順調で、売上高は51億ドル、同45%の増収と、会社全体を牽引する形となりました。

一方、グーグルの持ち株会社であるアルファベットは、米国の税制改革の影響で30億ドルの純損失を計上したものの、売上高は同24%増の323億ドルと、やはり過去最高を更新しています。

このうち、クラウドやAI(人工知能)スピーカーを展開する非広告事業は、売上高が46億ドル、同38%のプラスでした。伸び率では主力の広告事業を大きく上回っています。

そして、マイクロソフトのクラウド部門は売上高が78億ドルと、絶対額は3社の中で最大ですが、増収率は同15%にとどまる結果に。数字だけを見れば、アマゾンやグーグルほどの伸びにはなりませんでした。

なぜアマゾンの勢いが突出しているのか

アマゾンのクラウド事業の勢いが突出している理由は2つ考えられます。

同社では、社内で使われる大量のサーバーを管理する必要があることから、世界で一番多くのサーバー管理者が集まっていました。同じ仕事をするなら、大規模でやったほうがコストは安くなります。

こうして、アマゾンはサーバーの管理コストが世界で一番安い会社になりました。その結果、同社のサーバーにデータを預けるアマゾンのクラウドが、安くて安心で大人気になったわけです。

ただ、最近のアマゾン人気はこれだけが理由ではありません。もう1つのポイントは、AIの性能が高いことです。

同社の強みは「この本を買っている人は、こんな本も買っています」で知られるレコメンド機能です。アマゾンはネット通販業界の覇者になるため、さらにさまざまなAIによる購買行動分析を推し進めています。

その投資額は年間1兆円規模。ですから今、アマゾンは世界でも有数の高度なAI開発を進めている会社ということになるのです。

異なるアプローチで迫るグーグル

このAIは、アマゾンのクラウド上で付帯サービスとして一般の企業も使うことができるようになっています。ここが新たに同社のクラウドにデータを移そうと考える企業にとっての関心事です。

アマゾンのAIなら、これまでわからなかった新しい観点でデータが活用できるようになります。それもイチから開発するよりもずっと性能が良くて使いやすい。そのような観点からアマゾンが好まれるのです。

この方針はグーグルも同じ。やはり年間の研究開発費は1兆円超えで、AIの活用では世界一の座を目指しています。

グーグルといえば、世界一の囲碁棋士を打ち負かした「アルファ碁」の開発や、AIが運転する自動運転車の開発で知られています。ですから、アマゾンとはまた違った形でのAIの開発が期待できます。

(写真:ロイター/アフロ) 

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