2月6日、日経平均株価が大幅安となり、前日比1,071円(▲4.7%)と大きく下落しました。前日5日も592円ほど下がっていますが、2日連続で大きく下がるのは珍しいことです。

きっかけは米国株の大幅な下落です。代表的な指標であるNYダウ平均株価は2日に665ドル、5日に過去最大の下げ幅となる1,175ドルと続落しています。これにより、世界各国の市場で「リスクオフ」の流れとなり、国内株式市場にも波及して下落につながりました。

週末にいったん1ドル109円に戻っていた外国為替が再び1ドル108円台の円高となったことも、マイナス方向に影響したとみられます。


なぜ米国株と連動?

日経平均は、欧米の株式、特に米国株との連動性が高まっています。企業のグローバル化が進み、多くの上場企業の海外売上比率が50%を超えた今、欧米の景気動向が日本企業の業績に影響するという事情もありますが、別の理由も存在します。

マネーのグローバル化とインデックス運用増加の影響です。現在、東証1部の売買代金の70%強を海外投資家が占めています。10年以上前は彼らも日本株単独の運用が中心だったのですが、今は世界の株式市場全体で運用したり、「マルチアセット」という株・債券・商品などをミックスした運用などの市場をまたいだ運用が増えています。

また、世界的にインデックス型やバランス型の投資信託の運用残高も増えています。そのため、これらの運用事業者が株式の比率を下げるときは、米国株と日本株を一緒に売ることも増えていますし、業種横断的に「自動車」の割合を増やすときは、トヨタ自動車とドイツのフォルクスワーゲンを同時に買う、といった運用が増えていて、結果的に連動性が高まっているのです。

「恐怖指数」急上昇が原因なのか

今回の株価急落に関して、新聞報道などでは「恐怖指数」ともいわれるボラティリティ指数(VIX)の急上昇が米国株売りを誘発したとの見方が出ていて、日本でも同様の動きが指摘されています。

しかし、それらの指数が大きく動いたのは今週ですが、日米の株価が下がり始めたのは先週からです。私は、今回の下げは米長期金利上昇に対する見方が変化したことが原因ではないかと考えています。

「良い上昇」と「悪い上昇」はどう違う?

金利上昇には、「良い上昇」と「悪い上昇」があります。「良い上昇」は、景気拡大が背景にあります。消費や投資への意欲も旺盛なため、金利上昇で支払い利息負担が増えても、おカネを借りて投資・消費する企業や人が減らない状態です。

2015年12月以降、米FRB(連邦準備制度理事会)が何回か政策金利を引き上げていますが、米国景気拡大が最大の理由であり、「良い上昇」の典型例と考えられます。

この場合、市場は「リスクオン」となり、安全資産とされる債券が売られ(債券価格が下落=金利は上昇)、リスク資産といわれる株式などが上昇します。株価上昇と金利上昇がセットになっているのが特徴です。

一方の「悪い上昇」は、景気や企業業績の改善を伴わないか、もしくは景気回復を上回る速度で金利が上昇している場合です。金利負担の増加が、企業収益の悪化や消費の冷え込みなど、経済にマイナス影響を与える可能性が心配されるわけです。

この場合、市場は「リスクオフ」となり、株式などのリスク資産が売られます。金利上昇と株価下落がセットになるので、株と金利の関係が「良い上昇」の時とまったく逆の動きとなります。

「良い上昇」が「悪い上昇」に変化した可能性

金融市場は、「実際にどうだったか」よりも、これから「どうなりそうか」という市場参加者の心理に左右されやすいものです。同じ事象でも「どうなりそうか」という見方次第で、株価の動きが変わってしまうのです。

FRBは2016年に1回、2017年に3回利上げを実施しました。米国の長期金利は2016年11月の米大統領選後の1.8%から2.6%まで一気に上昇しています。同年後半と翌2017年は日米ともに株価上昇が続きました。「株価・金利がセットで上昇」です。市場では、米国の利上げと長期金利の上昇が「良い上昇」と認識されていた可能性があります。

2017年後半の米長期金利は2.1~2.4%で推移して落ち着いていましたが、年明けから急に動き出し、直近では2.8%台まで急上昇しました。上昇スピードが速かったことで、経済へのマイナス影響を市場が意識し始め、「金利上昇+株価下落」に変化しているようです。長期金利の上昇を「悪い上昇かも」と市場が感じ始めたとすれば、説明がつきます。

悲観は不要だが、プラス材料もない

NYダウ平均は約2ヵ月分の上昇幅をちょうど帳消しにした形です。株価のベースとなる米国の経済と企業業績の堅調さに変化はありませんし、直近の上昇ペースが速すぎただけとの見方も可能です。

そう考えた場合、今回の下落も一時的な下落にとどまる可能性もありえます。ただし、再び上昇基調に戻るためには、次回の企業決算や米政府の新たな経済政策など、追加材料がないと上がりにくいのではないでしょうか。

一方の日経平均は、昨年10月後半の企業の第2四半期(2Q)決算の発表シーズン前に戻ったイメージです。10月といえば、米株価上昇と2Q決算への期待値が高まり、日経平均が16営業日連続で上昇した頃です。その後、実際の2Q決算は増収増益が目立ち、株価がさらに上昇しました。

現時点で国内景気や企業業績に陰りが見えたわけではないので、株価の先行きをそう悲観する必要はないと思います。しかし、先週から本格化している第3四半期決算の発表では、前回2Q実績をさらに上回った企業はあまり多くありません。つまり、追加のプラス材料がない状況です。

当面の株価は、まずは米国株の動きに左右されると思いますが、短期的な動きが一巡した後は、材料不足で春ぐらいまでは停滞しそうだとみています。

(写真:ロイター/アフロ)