はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する野瀬大樹氏がお答えします。

2000万円程で弟が購入した3LDKのマンションに、私、弟、妹の3人で住んでいます。マンションの月々の支払いは9万円(修繕費、管理費込)です。支払いの内訳は、兄弟3人で話し合って決めていますが、現在の内訳が妥当なのかについて判断いただきたいです。

【現在の内訳】
・私:6万円
・弟:2万円+光熱費全額
・妹:1万円

社会人1年目の妹は負担を軽くしています。私の支払い分をもっと少なくしてもいいのかなと思いますが、立場上、姉なので多く払うのが当然だとも思います。弟に対しては「姉だから」「弟の持ち物に住まわせてもらってる」「弟は共同家事(ゴミ捨てや備品補充)をよくしてくれる」という理由で、私自身は納得していますが、妹にはもう少し生活費を負担してほしいです。というのも、妹は収入の割に激安な家賃で住み、光熱費の負担もないため、その分を遊びに使えて(私から見ると)豪遊生活をしています。共同家事も弟ほどしていません。

間取り的には、私(6畳)、妹(6畳)、弟(4畳半)の部屋とリビングといった感じです。弟が一番狭い部屋ですが、合意の上です。妥当な家賃と光熱費の内訳はどのようになるでしょうか。また払い過ぎている分があるのではあれば、取り戻すことはできますでしょうか。兄弟仲良く暮らしているのでお金の話は穏便にすませたいです。
(20代後半 未婚 女性)


野瀬: ご質問ありがとうございます。このケース、税務上はすこし気になるところなので、ちょっと整理してみましょう。

一応、住居の名義は弟さんなので、理論上は「弟さんに対して質問者と妹さんが家賃を払う」という形になります。つまり、弟さんに家賃収入が発生してしまう、ということです。ただし、光熱費は弟さんが全額持っていますし、備品なども実質、弟さんが負担しているようなので、兄弟の家計関係は非常に複雑になっています。さらに、冷蔵庫の中も兄弟で共有でしょうから、この場合兄弟3人の「生計はひとつ」と判断することができると思います。

この「生計がひとつ」となった場合は、兄弟間で家賃をとっていてもそれを、不動産所得とする必要は原則的にはありません。それをやり出すと、親と同居している子どもの家賃負担などが非常に複雑になるからです。この税務上の問題がスッキリしたところで、家計負担の議論に移りましょう。

兄弟間の家賃負担はどうあるべきか

今回のご相談を聞いていて、非常に懐かしい気分になりました。なぜなら私自身、質問者の方と同じように、東京で仕事をしていたころは同じく東京で仕事をしていた妹と同居していたからです。

二人で生活したほうが、洗濯機・乾燥機・冷蔵庫・レンジなどの家電が一つで済みますし、荷物の不在預かりなども楽だからです。当時の私と妹の家賃負担は、私:8.5万円、妹:5.5万円でした。これに加え、二人で2万円ずつ、合算して4万円を生活費として拠出し、共用の買い物財布に入れるというスタンスです。水道光熱費もすべてここから出します。この家計負担で当時は何も不満は出ていませんでした。あきらかに私の部屋のほうが広かったので、妹は不満に思っていたかもしれませんが(笑)。

私は率先して家事をやるほうですし、必要な振込などの事務処理などもすべて、私がやっていたことも影響していたと思います。こういった経験から至った結論は、家賃負担に「これだ!」という確実な正解はないということです。

兄だからと私が少し多めには出していましたが、それでも妹は不満だったかもしれないし、私は部屋も広いのでエアコンをよく使っていたと思いますが、長期出張になることも多かったので、実施的な光熱費の負担関係はよく分かりません。ドライヤーをまったく使わない私に対して妹は毎日使ったりするからです。

これらの個々の事情をすべて合理的に計算して家賃や家計の負担を決めるのは、正直、不可能だと思います。これは国の予算案と似ていると思います。100%全員が納得する案なんて、不可能ですし、実質だれが各々の出費の恩恵を受けているかも分からないし、結局どうしようが、どこかからは文句が出るからです。

「わかりやすく、シンプル」に分割すること

このように「どうしても文句が出る問題」の場合、一番よい解決策はとにかく「わかりやすく、シンプル」なものにすることです。

今回の場合は9万円の分割なので分かりやすく、3万、3万、3万でしょうか。これに加えて、光熱費や消耗品の負担として、毎月さらに2万、2万、2万を徴収すれば完璧だと思います。毎月6万の光熱費・消耗品は多いかもしれませんが、それは不定期な出費のために、ストックしておけばよいでしょう。

ただ、妹さんにとって、この負担はあまりに急なので、1万から2万、2万から3万、光熱費+消耗品負担も0.5万から1万、1万から2万と1年ごとに負担を増やしていけばよいと思います。その段階に応じて質問者の負担も軽くなる形になります。弟さんはすでに、今が3万円の負担なのでこのままで良いと思います。

妹さんにとっては負担増になりますが、一番分かりやすい形なのでここは3年の間に、納得してもらいましょう。そしてこの負担増は、長い目で見ると妹さんのためにもなるのです。今の家賃負担がほとんどないという生活が当たり前になってしまうと、妹さんにとって今の家、今の生活の居心地が良すぎて、なかなか経済的な自立ができなくなります。言葉は悪いですが結婚が遅れる可能性もあります。

私の同世代の友人知人で男女問わず結婚していない人を見ると、「家賃がいらない」「両親がやさしい」などの理由でとにかく実家の住み心地がよい人が多いのが特徴です。いつまでもご両親や質問者の方が健在ならよいですが、今後50年のことを考えると「家賃ってのはこんなにかかるんだよ」ということを妹さんにも、若いうちから知ってもらったほうがよいと思います。

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