はじめに

同時代に生きている意義

そして、コレクションの話に移ります。

もちろん、レオナルド・ダビンチの時代は、王様とか貴族とか一握りのお金持ちしか彼の作品を手に入れることはできなかったでしょう。でも印象派の時代は基本、今と同じだと大雑把に言えると思います。

日本人がとりわけ大好きなゴッホ。いろいろ説があるみたいですが、生前に売れた作品は1点のみ。「赤いぶどう畑」という絵で、アンナ・ボックさんという人が11万円ぐらいで買ったそうです。有名な陶器メーカーの一族で今、日本でも「ビレロイ&ボッホ」という名前で有名です。

裕福とはいえ、画家である弟の友人の絵を買ったのです。11万円です。買ったのは1890年、パリで開かれたアンデパンダン展、ゴッホ自殺の5カ月前。ゴッホが現在のような評価になることが分かっていればいいですが、もちろんそんなことはわかりません。

でも、アンナさんは高くなってほしいなんて思って買ったでしょうか? 目の前の画家と、目の前の絵。同時代というのは一緒に生きている時代ということで、その事実しか目の前にはないのです。だから買うのは簡単です。「これ、いいわね」「かわいそうだから買ってあげるわ」「あの場所に飾ったら良さそう」「他の人に売れちゃったら大変」とか、本当に目の前の時間、空間での出来事なのです。死んだ後のゴッホの作品は、弟が引き継ぎましたが、弟も死に、その奥さんがすべて管理して10万とかで売っていたそうです。その後の経緯はゴッホマニアサイトをみてください。

すべては現代アートだった

美術館で見ているものはすべて現代アートだった。そのことをまず、考えてみてください。

そうすれば、まったく違って見えてくるはずです。ゴッホの弟もグーピル商会というところで画商をしていました。今のギャラリーのシステムとはちょっと違うと思いますが、戦後に出てきた現代アートのギャラリーには、ゴッホのことがトラウマのように取り付いているんじゃないかなと思います。

私だったらゴッホを死なせやしない、作品をちゃんと評価して、みんなに紹介する!才能を見抜く!そんなことに取り付かれながら、始めたんじゃないかと思うのです。

次の回では、ゴッホを11万円で買ったことにつながるよう、私がどうしてギャラリーを始めたか、どんなものを買い始めていったのかを書きたいと思います。

参考:
http://www.christies.com/features/Leonardo-and-Post-War-results-New-York-8729-3.aspx
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-12-07/P0L6VT6JIJUO01
http://www.christies.com/salelanding/index.aspx?intsaleid=27244&saletitle=

写真:ロイター/アフロ

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