はじめに

商魂たくましい中東ドバイ

アラブ首長国連邦のドバイでは、観光客が普段行かないようなローカルのモールでも春節を祝うキャンペーンが実施されているそうです。イベント情報を集約した特設ページも立ち上げられ、力の入りようがうかがわれます。


デーツ(ナツメヤシ)も春節仕様で販売されている

「中東で最も有名な日本人」として知られる鷹鳥屋明氏によると、ドバイには中国系住民が30万人ほど定住しており、そうした人向けの小さなショッピングモールなどでも毎年、決まって春節を祝うそうです。

また、世界最大のドバイモールをはじめとした観光客向けの高級ショッピングモールでも、特設会場を設けて、中国文化の紹介などを行っているといいます。

アジアにも意外とクールに受け止める国も

アジアを見てみると、台湾や香港は言うに及ばず、中国系移民が圧倒的に多いタイやシンガポールでは盛大に春節を祝います。しかし、中にはそこまででもない地域も存在します。

マレーシアも中国系が人口の25%程度と多く、春節を祝うものの、多民族国家ということもあって、祝日になっているのは春節初日の当日だけ。ただ、中国系の人々は自主的に1週間程度の休暇を取るのが習慣とのこと。また、イスラム教の「ハリラヤ」やヒンドゥー教の「ディパバリ」なども、祝日になるそうです。


東南アジア最大級の規模の寺院、クアラルンプールの天后宫も春節に向けて派手なデコレーション

カンボジアは、距離の近さやビザの取りやすさから、中国人にとってタイと並んで人気の旅行先です。そんなことから、さぞかし多くの催し物が…と思い、旅行で訪れる友人に取材を依頼したのですが、定住人口は全体の1%未満と少なく、春節はあくまで観光客向けのプロモ―ションの位置づけで、免税店の中だけで見られたようです。


カンボジア全体では盛り上がってはいないものの、店内には戌年にまつわるかわいい装飾が施されている

中東や東南アジアにおいては、春節といえば観光客向けセールの時期という捉え方になっているようです。

最後は、中国と国境を接するインドです。以前の記事でも取り上げたように、OPPOなど中華系の企業は進出しているものの、大国かつご近所にもかかわらず意外にも居住中国人がとても少ないのです。

絶えず国境で小競り合いが続くなど、非常に関係が悪い事もあり、「中国人に会いたくなければインドに行け」と冗談で言われるほど。在住人数は国内唯一のチャイナタウンがあるコルカタを中心に、2000~4000人程度といわれています。したがって、春節を祝う習慣もまったく普及していません。

世界各地の春節から得られるヒント

同じ春節のイベントでも、歴史や移民の状況によって、地域ごとに異なる、さまざまな側面が見えてきました。周知の通り、日本と中国の関係の歴史は長く、中国系の定住者が75万人程度、訪日旅客は月に100万人程度と、かなりの人が日本に滞在しています。

つまり、このシーズンには単純計算で175万人の「『春節』といわれるとちょっとドキドキする」人たちが街を歩いていることになるのです。マーケティングとして春節を考えた場合、これはかなり大きなターゲットといえるのではないでしょうか。

春節に限らず、世界には他にも国、民族、宗教ごとにいろいろなイベントがあります。そして、外国からの移民や観光客は今後も増え続けていくと予測されています。

日本は外国人をことさら狙って何かをするというのはあまり得意でない印象がありますが、積極的にこうしたものを取り入れれば、大きなビジネスチャンスにすることもできるのではないでしょうか。

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