皆さんは「塩トマト」をご存じでしょうか。まだあまり存在を知られていませんが、有名なフルーツトマトをしのぐ甘さとおいしさということで、一時はさまざまなメディアで取り上げました。

この塩トマトを復興の柱にしようと動いているのが、東日本大震災で大津波が押し寄せた宮城県岩沼市です。津波による塩害が出て野菜やフルーツが枯れてしまった農園が、塩害の塩を逆に活用することで、おいしい塩トマトを実らせようと活動してきました。

「塩トマトで復興から立ち直る」という活動が始まってから、今年で7年。現状はどうなっているのでしょうか。


そもそも塩トマトとは何か

塩トマトは、いろいろな点で常識外れのトマトです。

そのネーミング通り、塩分濃度の高い土壌で栽培されたトマトなのですが、名前に反して、その味は極上の甘さ。スイカに塩を振りかけて食べると甘さがグッと引き立つのと同じ理屈で、塩気を含んでいることでより甘みが感じられるのです。

一般的なトマトだと、ドレッシングをかけないと酸味やえぐみで食べづらさを感じる人もいるかと思います。が、この塩トマトは水分を多く含まず、小ぶりで味が濃縮されており、何より天然の塩気がきいているので、何もつけずにそのまま丸かじりでおいしく食べることができるのです。

また、塩トマトは産地が限定されていることによる希少性から、高級贈答品としても重宝されています。限定されているのは産地だけではありません。冬から春までしか食べられない季節限定の食材という側面も、希少性を高めています。塩トマトは高級フレンチレストランなどでサーブされることもあり、最上位クラスのギフト用トマトといっても過言ではありません。

なかなか日の目を見ない塩トマト

甘くておいしいトマトには、塩トマトのほかにも、フルーツトマトやミニトマトがあります。塩トマトもフルーツトマトも品種ではなく、栽培方法の違いによるネーミングです。

1995年頃から注目され始めた塩トマトは、熊本県八代市の一部地域でしか栽培されておらず、極端に産地が限定されてきました。そのため、市場に姿を現して20数年が経過した今でも、まだメジャーな存在とはいえません。

そんな塩トマトが一躍脚光を浴びることになった出来事がありました。2011年の東日本大震災で津波が押し寄せ、甚大な被害を受けた宮城県岩沼市。最初は海水による塩害で作物の栽培は絶望的かと思われましたが、そこに登場したのが塩トマトでした。

  
仙台国際空港に程近い岩沼市は、東日本大震災の大津波で甚大な被害を受けた

土壌中の塩分を逆に利用して、おいしい塩トマトを栽培することに成功したのです。塩トマトを新たな農作物として栽培し、復興へつなげようという取り組みが大きな話題を呼びました。

しかし、そうはいっても、もともとメジャーなトマトと比べると知名度がないので、塩トマトが震災復興の大きな柱になっているとは言いづらいのが実情です。これは宮城県に限った話ではなく、塩トマト自体がまだまだ知名度の点で他のフルーツなどに及んでいないためです。

塩トマトのブランディングに必要な要素

塩害を逆手に取った着想自体はとても素晴らしいもの。では、どうすれば塩トマトが復興の柱となりえるのでしょうか。

塩トマトは素晴らしい特性を持ったトマトであり、世間的な知名度は低くとも、根強いファンがついています。「誰もが知っているブランド」というより「知る人ぞ知る逸品」という位置づけになっているのです。

ですので、塩トマトは「珍しくておいしいトマト」という直線的な売り方ではなく、「甘くておいしいトマト同士の食べ比べ体験ができるサプライズギフト」という新たな切り口でマーケティングをすれば、思わぬ売れ行きを見せる可能性があると思っています。

私が経営しているフルーツギフトショップでは、塩トマトは単品でも売れてはいますが、多くが塩トマトとその他のフルーツとの詰め合わせで売れています。

また、自宅用ではなく、母の日や寒中見舞い、内祝いなどギフト用途で売れていることが多いです。知名度がないことを利用して、サプライズギフトとして認知されているように思われます。世の中の商品の中には、贈り物用途に変えるだけでヒット商品になるものがあります。

有機・無添加食品の通信販売を展開するオイシックスドット大地でも、この塩トマトを商品として販売しています。購入客からは「甘みとうま味が強くておいしい」「とてもおいしいので、実家のお母さんにおすそ分けをしたら喜ばれた」という声が届いているそうです。

津波被害を受け、奇しくも塩トマトの栽培に適した土地になった岩沼市。「禍を転じて福となす」の故事通り、新たな販売戦略で宮城県ブランドを築き上げていくことを期待せずにはいられません。