はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する花輪陽子氏がお答えします。
34歳のシングルマザーです。1年半前に離婚し、娘と実家へ出戻りました。家計は親とは別にしています。現在、現金で1,300万円、投信で130万円ほど所有しています。再婚できるかわからないので、この先のプランをしっかり立てていきたいと思っています。ただ、離婚前は家計管理を元夫に任せきりだったため、何から手をつけたらよいのかわかりません。
〈相談者プロフィール〉
・女性、34歳、未婚、子供1人(5歳・幼稚園年中)
・職業:会社員
・居住形態:親の家で同居・両親(無職)、娘
・住んでいる地域:埼玉県
・手取りの月収:給与22万円、前夫からの養育費8万円
・毎月の支出目安:28万円
花輪: 子供の貧困は、特に母子世帯に多い状況です。平成27年の厚生労働省の調査によると、子供の貧困率は大人が2人以上いる世帯の相対的貧困率が12.4%なのに対して、ひとり親家庭の相対的貧困率は54.6%となっています(2012年値)。平均年収でみても、母子世帯の平均収入181万円は、子供のある世帯の平均収入697万円の3分の1にも満たないのです(2011年値)。
また、離婚をして子供がいた場合に支払われるべき「養育費」に関しても、厚生労働省の2011年度の全国母子世帯等調査によると、養育費の取り決めをしているのは母子世帯の4割に満たず、実際にお金を受け取っているのは2割に満たないというデータもあります。
まず相談者には実家があり、養育費を受け取っており、ご自身も母子世帯の平均収入以上の収入があるということは、とても幸福なケースであるといえます。
万一、養育費の支払いが滞るということがあった場合は、公正証書などを交わしておけば、取り立てを行うことも可能です。子供のためにも面会などをしっかりと行い、良い関係を築いておくことが非常に大切です。
シングルで子供を育てるのに必要になお金
シングルで子供を1人育てる場合のマネープランとして、子供の教育費と自分自身の老後資金の準備が必要になります。
文部科学省の「子どもの学習費調査」(平成24年度)によると、幼稚園(3歳)から高校3年生までの15年間をすべて私立に進学した場合の教育費は約1,677万円となり、すべて公立に進学した場合(約500万円)の約3.4倍になります(学校外活動費も含む)。
大学の入学、在学費用に関しては、日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果(国の教育ローン利用勤務者世帯)」(平成25年度)によると、国公立大学の場合で合計約519万円、私立大学文系の場合で約691万円、私立大学理系の場合で約812万円が平均的にかかっています。
進路別にかかるお金を把握して、教育費の準備をしましょう。
児童手当に加えて、母子家庭の場合はさまざまな助成を受けられる可能性が高いので確認しておくとよいと思います。
国からの経済的援助として、「児童扶養手当」が所得に応じて月々9,990円~4万2,330円(子供1人の場合)もらえます(子供の人数によって加算あり)。かつては母子家庭のみが対象でしたが、2010年8月からは父子家庭ももらえるようになりました。また、バスや地下鉄の特別乗車券や通勤定期の割引、医療費の減免などさまざまな形でのサポートがあります。
自分の老後にはいくら必要になる?
65歳からもらえる予定の年金額は約160万円(月約13万3,000円)です。各自の将来の年金見込額は「ねんきんネット」で試算することができます。
平成28年の家計調査によると、高齢単身無職世帯の平均的な1ヵ月の収入額は12万93円で、消費支出は14万3,959円です。税金や社会保障の支払いなどの非消費支出を引くと、2万3,866円の赤字となっています。
90歳まで生きると仮定して、65歳から25年間の赤字の累積額は約716万円になります。また、最低限の予備費として500万円程度考えたいので、少なくとも1,216万円は必要なことが分かります。
現在、現金で1,300万円を保有しているということですが、銀行預金に入れる場合、2つの銀行に分けるか、決済性預金を活用しましょう。銀行預金の中でも無利息の決済性預金は保護の上限がありません。ですが、利息のつく普通預金や定期預金などは1,000万円までとその利息が保護されます。
基本的に自分の収入で生活を回し、夫からの養育費や国からの援助は学費に充てる、手持ちの資産は老後資金として使わないように保管をしていくというスタンスで問題ないと思います。
親の家で同居をしているということで生活コストを下げることもできているので、支出の見直しをして毎月の収入から10%程度は老後資金などに貯めていけると良いですね。