はじめに

公民館が離発着場に?

このドローンポート登録制度に自治体として最初に参画するのが、長野県伊那市です。2006年の市町村合併で山間地域が増加した同市では、山奥の集落への物流網の確保が大きな課題となっていました。そこで、課題解決の切り札として大きな期待が寄せられたのが、ドローン物流というわけです。


ブルーイノベーションなどが開発したドローンポート

ただ、現行法では前述のような制約があり、空路の下に民家があるとドローンを飛ばせないのが現状です。そこで、伊那市では市内各所を流れる河川に着目。「INA アクア・スカイウェイ」と名付け、河川の上空をドローン専用の空路として利用する準備を進めています。

ほかにも、小規模水力発電やごみ処理発電で蓄えた電力をドローンにチャージすることで、飛行継続地域を広げることも検討。市が保有する地図情報システムを活用して、飛行想定ルートの地権者をリスト化し、スムーズな空路交渉ができるようなサポートも展開する予定です。

実際の利用シーンとしては、集落の公民館などにポートを設置し、お年寄りがお茶を飲みに公民館に集まった際、ICTを使って注文を出し、ドローンが商品を配達。お茶を飲み終えたお年寄りが自宅に帰る時に、ドローンが配達した商品を持って帰る、というものを想定しています。

「これまでもバスでの貨客混載の実験をやってきました。しかし、本数が少ないので、必要な時に必要なものを確保しようとなると、ドローンが最適なのです」(白鳥市長)

今年度中に100ヵ所を設置へ

ドローンポート登録制度は今年秋をメドにベータ版をリリースする予定です。当面は無料で提供し、今年度中に全国で100ヵ所の拠点登録を目指すといいます。事業が軌道に乗れば、適正価格を探りながら、利用料を徴収したい考えです。

「離発着システムにはいろいろな企業が取り組んでいます。われわれの登録制度では、そうしたものがどこにあるのか、企業の垣根を越えて、使いたい人が一目でわかるようにしたい」と、JUIDAの鈴木理事長は語ります。

まずは山間部など交通利便性の高くない過疎化地域での導入が期待されるドローン輸送ですが、そこで安全運用の知見が蓄積されれば、都市部での利用拡大も見込まれます。長期的な人手不足が懸念される中、物流におけるラストワンマイルの課題を解決しうるドローン輸送は、“空の産業革命”に発展するかもしれません。

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