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ピーチ+バニラ、LCC統合は“甘い結果”をもたらすか

どんな事情がANAを動かした?

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ANAホールディングス(HD)傘下のLCC(格安航空会社)であるピーチ・アビエーションとバニラ・エアの2社が3月22日、経営統合を発表しました。統合によって、日本航空(JAL)系のジェットスター・ジャパンを抜いて、売上高で国内トップに躍り出ます。

ただ、成長著しいアジアのLCC市場の中で、日本勢の存在感は小さいまま。航空業界からは「日本ではLCC事業は成功しない」という声も聞かれます。今回の統合はどのような意味を持つのでしょうか。


状況が大きく異なる2つのLCC

統合を発表したピーチとバニラは、ともにANA系列です。普通に考えると、同じ系列の2社が統合すれば、経営効率が上がって、より大きく成長できるように思えます。

しかしこの2社、実はかなり違う特徴を持っていて、規模の効果による単純な経営統合効果があるかどうかは微妙なのです。

ピーチは売上高517億円、純利益49億円の黒字企業(2017年3月期)。ANAHD、産業革新機構、香港の投資ファンドが出資する形で、2012年から関西国際空港を拠点空港として運航を始めました。現在はANAHDが67%の株式を持っています。

一方のバニラ・エアは、もともとはマレーシアのエアアジアと全日本空輸(現ANAHD)の合弁会社としてスタートしました。しかし、低価格路線を主張するエアアジアとの方向性の違いが明らかになり、2013年に提携を解消。ANAHDの100%子会社となりました。

路線は成田国際空港を中心に展開しています。売上高は239億円とピーチの半分以下で、純損失7億円(2017年3月期)と直近は赤字決算です。

2社の統合に踏み切った理由

このように比較すると、好調のピーチと苦戦のバニラ、関西中心に路線の独自性が強いピーチと、関東中心で路線も少ないバニラが経営統合をしても、路線運営上の相乗効果はあまり大きくなさそうです。

もちろん、本社機能やシステム、広告宣伝など、統合によって1つにするメリットのある分野もあります。しかし、そもそもこれまでの投資先が関西と関東に分かれていたことを考えると、重複する分野での費用削減にも限界がありそうです。

それでは、なぜANAHDはこの2社を統合させるのでしょうか。関係各社の発表を総合してわかることは、要するに「今のままでは、優等生のピーチですら、これ以上の成長機会を取り込めない」というところに経営統合の意味があるようです。

2020年に東京オリンピックを迎え、これから先も訪日観光客は増加の一途だと考えられます。アジア全体ではLCCが急成長し、国によっては既存の航空会社よりもLCCのほうが収益性で上回っています。

一方で、さらに市場成長が見込めるアジアのLCCの中にあって、このままでは日本のLCCは市場から取り残される可能性があります。その危機感が2社の手を結ばせたということのようです。

先行する“アジアの雄”

実際にアジアのLCC市場を見ると、首位の豪ジェットスターと2位のエアアジアという2強の強さが際立ちます。それぞれ売上規模は日本円にして2,500億~3,000億円と、経営統合後のピーチ+バニラと比較して3~4倍の規模に達しています。

中でも、成長性の面ではエアアジアの積極さが目立ちます。地盤のマレーシアに加えて、現在ではタイ、インドネシア、フィリピン、インド、そして日本の6ヵ国で航空会社を運営しています。

買収による拡大構想も浮上してきました。中国の海南航空を傘下に持つ海航集団から、航空関連事業を買収しようというのです。

海航集団は、世界的なホテルチェーンであるヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスの買収で世界の注目を浴びた企業集団です。ところが、巨額の投資によって膨れ上がった負債に対し、中国当局の指導が入り、事業縮小を模索せざるをえなくなっています。その結果、資産売却を急いでいるという事情があるのです。

真の成長機会を取り込めるか

この買収によってエアアジアは中国に進出し、さらにはベトナム、ミャンマーへも事業展開を検討しています。

今、航空市場が急速に拡大しているのはアジアです。その原動力となっている中産階級が志向するのは、大手航空会社ではなくLCC。それゆえ、アジアでは大手よりもLCCの成長率が高いのです。このビジネスチャンスをエアアジアは着々と取り込んでいます。

それと比べて、ANAやJALはどうでしょうか。日本の大手航空会社は伝統的に、日本の国内線と、日本と海外を結ぶ国際線だけをビジネス機会としてきました。

なぜANAはアジア全体へとビジネスチャンスを広げていかないのでしょうか。その姿勢に歯がゆい気持ちを持っていたところ、今回、ピーチとバニラの経営統合が発表になりました。小さくまとまって利益を出しているだけでは今後の成長はないことから、一歩足を踏み出すことを決断したわけです。

香港資本が入っているピーチには、単なる黒字経営だけではなく、アジアの需要を積極的に取り込むこと、そしてアジアから日本へたくさんの観光客を呼び込む役割を果たしてほしいところです。単にANAHDの2つの子会社が合理化のために合併するだけではない、それ以上の飛躍が新生LCCには期待されます。

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