はじめに
本題、専業主婦の残業代は?
前項では、妻の月収は14万1,400円という計算結果が出ました。残業代の計算をする前に、前提とする条件を把握しておきましょう。
今回は
- 規定就業時間(定時)は9:00〜18:00 休憩1時間(週40時間の法定時間)
- 規定就業日は月曜日〜金曜日の平日
- 妻は朝の6:00〜22:00(うち休憩2時間)で就業
- 土日祝日は残業として8:00〜21:00(うち休憩2時間)でとします。
残業代といっても、残業した時間や日によってそれぞれ割増がされます。それらの代を割り出すにあたって基準となるのが基本時給。
基本時給は『月給の額÷1年間における1ヶ月の平均所定労働時間』で計算します。
完全週休2日制の2018年の休日日数を124日として1ヶ月の平均所定労働時間を計算すると、(365日-124日)(1年の労働日数)×8時間(就業時間)÷12ヶ月=約160時間となります。
つまりここでの妻の基本時給は16万500円(妻の月収)÷160時間(1ヶ月の平均所定労働時間)=約999円
おおよそ時給1,000円といったところですね。キリがいいので1,000円で計算しましょう!
残業代は割増賃金となり、
- 就業時間が1日8時間、週40時間の場合、定時〜22:00の残業は基本給の1.25倍《時間外労働割増》
- 22:00〜5:00の残業は時間外労働割増にさらに25の割増、つまり基本給の1.5倍《時間外労働割増1.25+深夜労働割増0.25》
- 法定休日(日曜・祝日)の残業は35倍《休日労働割増》
- 法定外休日(土曜日)の残業は会社の規定による(今回は8時間までは基本給のまま、以降は1.25倍とする)
と法律で決められています。
では、早速残業代の計算!
妻は平日6:00うち休憩を2時間取り、実質14時間就業しています。つまり、実質残業時間は1日6時間。深夜残業はないので、平日の1日の残業代は1,000円(基本時給)×1.25(法定外労働の割増)×6時間(残業時間)=7,500円(①)
土日は8:00〜21:00のうち2時間休憩を取っているので、残業時間は11時間。
土曜日は、1,000円(基本時給)×8時間(就業時間)+1,000(基本時給)×1.25(法定外労働の割増)×3時間(残業時間)=11,750円(②)
日曜日は、1,000円(基本時給)×1.35(法定外休日労働の割増)×11時間(残業時間)=14,850円(③)
つまり、1ヶ月の妻の残業代は7,500円×20日(平日)+(②)11,750円×5日(月の土曜日)+(③)14,850円×5日(月の日曜日)=28万3,000円
なんと基本給を大幅に上回る額に!
年間では(単純計算となりますが)28万3,000円×12ヶ月=339万6,000円
残業代だけでものすごい額ですね……。
ちなみに残業時間は月に230時間。労働基準法違反です。これが本当の会社なら完全なるブラック企業です。
まとめ
専業主婦の未払い残業代……驚きの額が出ましたね。実際に請求はできませんが、専業主婦にはこれだけの価値があるんだ!とお友達とのおしゃべりのネタにはなるはずです。
年間にして約340万円分の残業、これをこなせるのはきっと家族への愛があるからこそなのでしょう。
(記事提供/シェアしたくなる法律相談所)
*弁護士監修/パロス法律事務所 櫻町直樹先生(私が弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャル(Alfred Marshall)が語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)