はじめに

日経平均株価は2018年1月23日に 2万4,129円と、1991年11月以来、約27年ぶりとなる高値を付け後、調整局面に入っています。この調整局面がいつまで続き、どの段階で反転上昇に向かうのか、株初心者では判断がつきづらい状況です。

しかし、足元のような状況においても、トレンドや移動平均線を活用したテクニカル分析を用いれば、重要な下値メドや戻り高値のメドをあらかじめ予測することが可能です。


トレンドをつかもう

株価の値動きにはトレンドがあります。トレンドとは「傾向」「流行」という意味ですが、相場の世界においては価格推移の「傾向」や「方向性」を意味します。

株価が上昇傾向を続けていれば「上昇トレンド」、下落傾向が続いていれば「下降トレンド」、値動きが一定の値幅で推移している場合は「横ばいトレンド」と3つに分類されます。

トレンドはローソク足でも折れ線でも構いません。紙のチャートでもパソコンでも、この3つのトレンドにそれぞれ色を付けて、大まかな流れをつかみましょう。

これを基に現状のトレンドを考えると、2018年1月24日高値以降の下降トレンドがほぼ一巡して、横ばいトレンドに移行しつつある段階と読むことができそうです。

移動平均線を知ろう

トレンドの方向性が確認できたら、その次に移動平均線の概念を理解しておくと便利です。移動平均線は細かな値動きを排除してトレンドを抽出する方法です。時間軸を1単位ずつずらしながら平均値を計算して、それを結んで線にするので移動平均線といいます。

25日移動平均線を例に取ると、当日を含む25営業日の終値をすべて加えた後、25日で割ることで算出されます。そして、1日ごとにずらしていくことで、そこに方向性が生まれます。

これに投資家心理を加えると、どうなるでしょうか。毎日上がり続けていれば、移動平均線は上向きに推移します。その後の終値がこの移動平均値を上回っていれば買い手が有利な状況が続き、下落して移動平均線を下回ると買い手が不利になります。つまり、移動平均線とは市場参加者の平均売買コストの方向性を表していることになります。

移動平均線の中で、短いものは5日移動平均線、約1ヵ月程度の売買動向を知るには25日移動平均線が最もよく使われるといわれています。中期的には75日移動平均線、長期的には200日移動平均線が最も標準的といえます。

週間では13週移動平均線、26週移動平均線、52週移動平均線が最もよく使われており、四半期、半期、1年以内の季節的変動を除去しています。月間では12ヵ月、24ヵ月、60ヵ月移動平均線が用いられることが多く、特に60カ月移動平均線は「キチンサイクル」と呼ばれる短期の景気循環の影響を除去しています。

グランビルの8法則

移動平均線を用いたテクニカル分析で有名なものに、米国の投資分析家であるジョセフ・E・グランビル氏が1960年代に考案した「グランビルの法則」があります。その中で示されているのが、以下のような8つの法則です。

【4つの買い法則】

(1)移動平均線が下落後、横ばいになるか上昇しつつある局面で、株価が移動平均線を上に突き抜ける
(2)移動平均線が依然として上昇しているのに株価が移動平均線を下回る場合
(3)株価が移動平均線の上にあって、株価が移動平均線に向かって下落したものの、交差することなく再び上向きに転じる
(4)移動平均線が下降している場合でも、株価が移動平均線と大きく乖離して下落した場合

【4つの売り法則】

(5)移動平均線が上昇後、横ばいになるか下落しつつある時、株価が移動平均線を下に突き抜ける
(6)移動平均線が依然として下降しているのに、株価が移動平均線を上回る場合
(7)株価が下降する移動平均線の下にあって、移動平均線に向かって上昇し、交差しないで再び下向きに転じる
(8)移動平均線が上昇している場合でも、株価が移動平均線かけ離れて大きく上昇した場合

そのうえで、グランビル氏は「陥りやすい落とし穴」として10のポイントを挙げています。

(A)相場の語っていることの代わりに、他人のいうことに耳を傾けること
(B)耳寄りなニュースで株式を買うこと
(C)空売りの株数の減少している株式を買うこと
(D)天井値と大底値を当て推量すること
(E)個人的な推測に基づいて、強気にくみし続けること
(F)不本意な取引をすること
(G)技術的な指標を無視すること
(H)市場に長居しすぎること
(I)配当の重要性にとらわれて、目が利かなくなること
(J)基本的な指標にこだわりすぎること

以上の注意事項を掲げたうえで「タイミングこそ、すべてである」としています。

200日移動平均線から現状の日経平均を見ると、買い法則の(2)と(3)の間を往来しています。今後は、やや下向きの75日移動平均線と200日移動平均線のレンジ相場がしばらく続いた後、75日移動平均線を上回る相場展開が期待されるところです。

こんな古い話は時代遅れと思われる方は多いかも知れませんが、1929年の世界恐慌当時から、これらの教訓は今も当てはまることが多いことは事実です。実際のトレードを経験した方はこのことが思い当たるのではないかと思います。人間の生理的欲求は今も昔も変わらないのですから。

(文:いちよし証券 投資情報部 高橋幸洋)

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