はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。
一昨年離婚して家を出ました。無一文からの再スタートで、現在は賃貸に住んでいます。手元にはやっとかき集めた300万円のみです。今はそのうちの150万円を、3年満期の宝くじ付き定期預金に預けています。つみたてNISAも月2万円で始めたところです。保険は個人の介護保険に入っています。見直したほうがいいところや、今後の資産形成についてアドバイスをお願いします。
〈相談者プロフィール〉
・女性、56歳、バツイチ、子供3人
・職業:看護師(夜勤)
・居住形態:賃貸
・住んでいる地域:静岡県
・手取りの世帯年収:400万円
・毎月の支出目安:30万円
花輪: ライフスタイルが激変をして大変な時期かと思います。お子さん3人の年齢が記載されていなかったため、独立されているという前提で、資産運用のゴールをご自身の老後生活だと想定して回答させていただきます。
「貯蓄は三角、保険は四角」とは?
豊かな老後生活を脅かす要素として、病気や介護などが考えられます。将来の介護に備えて介護保険に加入されていると思いますが、その必要性について考えていきましょう。
よく「貯蓄は三角、保険は四角」と言われます。なぜ貯蓄は三角なのかというと、コツコツとお金を積み立てて増やしていくと、年月とともに貯蓄は増え、金額は右肩上がりの「三角形」となるからです。もし十分に貯蓄があれば、介護や病気などに貯蓄で備えることもできます。
他方で保険は、加入した直後から契約期間を通して一定した補償を受けることができるので、安定した「四角形」になります。貯蓄の多寡に関係なく、いつでも十分なお金を用意することができるのです。
たとえば、貯蓄がない時に事故や災害に見舞われた場合も保険に加入していれば、貯蓄ではとても賄いきれないような巨額の出費にも備えられるのです。
すべてのリスクに対して保険で備えると、保険料が高額になります。そこで、確率は低いかもしれませんが、起きると自分のインパクトが大きくなるようなことには保険をかけ、それ以外の子供の教育費など予定されていることに対しては貯蓄で準備をするのが現実的です。
介護が必要になる確率は?
それでは、介護が発生する確率と、介護が発生した場合の金額的なインパクトはどれくらいなのでしょうか?
厚生労働省の「介護保険事業状況報告 2015年」によると、介護を必要としている人の人数は620万人にも及びます。公的介護保険制度が始まった2000年と比べると、約2.4倍に増えています。
厚労省・総務省の統計によると、介護が必要になる人の割合は70~74歳で6.1%、75~79歳で12.9%、80~84歳で28.2%、85歳以上で60%と、加齢とともに急速に高まります。
介護が必要になったら、いくらかかる?
介護にはいくらお金がかかるのでしょうか。
生命保険文化センターの「平成27年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護経験者の平均的な介護期間は4年11カ月で、4割超が4年以上の介護期間を要したそうです。
また、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用も含む)は住宅改善や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計が平均80万円、月々の費用が平均7.9万円となっています。つまり、月々の費用は5年で換算すると、474万円になります。一時費用を加えると、在宅介護の場合は平均的に554万円程度かかるということになります。
これに対して公的介護保険の仕組みはどうなっているのでしょうか。
公的介護保険は40歳以上の人が全員加入して、介護保険料を納め、介護が必要になった時に所定の介護サービスが受けられるといったものです。65歳以上の人は「第1号被保険者」、40~64歳の人は「第2号被保険者」となります。
第1号被保険者は、要介護状態になった原因に関わらず、公的介護保険のサービスを受けることができますが、第2号被保険者は、老化に起因する特定の病気(16疾患)によって要介護状態になった場合に限り、介護サービスを受けることができます(末期がんも含まれます)。
介護サービスを受けるには、市区町村の窓口で申請をする必要があります。
費用は原則1割または2割負担(所得による)で、現物給付による介護サービスを受けることができます。介護の状態により上限額が決まっていて、上限を超えた部分や介護サービスのメニューにないサービスを受けた場合は全額自己負担になります。
介護には保険よりも貯蓄で備える
介護に関しては発生頻度は高いですが、金額のインパクトを考えると貯蓄で準備をする方が現実的です。介護保険に支払う保険料を貯蓄に回し、貯蓄で準備をすれば、介護が発生しなかった時に別の形でお金を使うことも可能です。
また、宝くじ付き定期預金に関しても、宝くじに当選する確率は非常に低いために、満期を迎えたら、個人向け国債などに変更をしてもよいと思います。つみたてNISAなどの非課税制度は積極的に活用してもよいでしょう。