はじめに
西口に東武百貨店と東武電車の乗り場。東口に西武百貨店と西武電車の乗り場。方角と代表的な施設が東西で逆転していることで知られるのが、池袋駅です。その池袋駅から徒歩で数分の場所に、西武鉄道グループが新しいビルを建設しています。
場所は駅の東側と西側を結ぶ、通称「びっくりガード」のすぐ近く。西武池袋線の南口から道路1本を隔てた場所です。
西武鉄道が所沢の本社とは別に、本店として使っていた古いビルを建て替えているもので、2015年7月に着工。2年9ヵ月を経て、4月9日に上棟式が行われました。完成予定は来年3月です。
このビルが完成すれば、周辺地域や池袋の街はどのように変化していくのでしょうか。新ビルの開発計画をひも解くことで、都心北西部を代表するターミナルの未来を占ってみます。
基礎工事には8ヵ月を費やす
西武鉄道は2012年5月に、前身の武蔵野鉄道設立から100周年を迎えています。同社としては、今回の建て替え計画も数ある100周年事業の1つと位置づけており、地域のランドマーク的な存在にしたいようです。
地上20階、地下2階建てで、地下は駐車場、1~2階は商業施設、4~18階の15フロアがオフィススペース、3階と19~20階は機械室などとなっています。15フロアのオフィススペースのうち、5フロアを西武鉄道、プリンスホテル、西武プロパティーズで使用し、10フロアを賃貸に出します。
オフィス部分の延べ床面積は約5万平方メートルあり、1フロア当たり平均640坪と、池袋としてはかなり貴重な規模です。近辺は低層のビルが多く、20階建てはかなり目立ちます。
それだけの高さの建物ですので、強度を上げるために、支柱にまっすぐな鋼材ではなくV字型の鋼材を使い、地上2階までは耐震構造、4階から上は免震構造になっています。3階部分に中間免震層を入れている点が、建築技術的にはかなり画期的なのだそうです。
この基礎部分の工事には8ヵ月を要したとのこと。実に、標準的な仕様であれば3階部分くらいまでは立ちあがっている期間を基礎工事に充てたわけです。
鉄道ファンが萌えるビル
実はこのビル、鉄道ファンが萌えてしまう仕様でもあります。古い建物が建っていた敷地の真横を西武池袋線が走っています。その西武池袋線の線路の向こう側の敷地も西武鉄道が所有しているので、そこも活用して、新しいビルは線路を跨ぐ構造になっているのです。
ビルの中に電車が吸い込まれていくような感覚を覚える
西武池袋駅の建物は、西武百貨店の南側に隣接しています。駅から出発した車両がびっくりガードの上を通り、すぐにこの新しいビルに吸い込まれるように入って行き、ビルの1階部分を通過していくのです。
鉄道に興味がない方は、それがどうした、と思われるかもしれません。しかし、東京メトロ銀座線の渋谷駅や小倉の北九州モノレールなど、同様の人気スポットが全国にあるように、ビルから電車が飛び出してきたり、吸い込まれていったりするアングルは、多くの鉄道ファンを萌えさせるのです。