キャリア

相次ぐ事故も逆風ではない?「自動運転技術」の有望銘柄

活躍が期待される異業種の企業

現在の自動車の基本形となるフォード・モデルTが発売されたのは、1908年にさかのぼります。箱の四隅にタイヤを配置し、ハンドルで操舵する構造のまま100年余りが経過した現在、自動車は大きな変化のタイミングを迎えています。

内燃機関(エンジン)からモーターへの転換、そして運転の自動化です。関連する企業は幅広い分野に存在します。従来の自動車とは異なる業種で、どのような個別銘柄があるのでしょうか。


EVブームが沸き起こった2017年

2017年の株式市場では、電気自動車(EV)が大きなテーマとなりました。イギリスやフランスが2040年までにガソリン車・ディーゼル車の製造・販売を廃止する方針を発表したほか、中国も追随するなど、世界的にEVシフトが鮮明化。世界最大の自動車市場と化した中国の方針に各国の自動車メーカーが足並みをそろえ、EV開発が加速するきっかけとなりました。

ただし、このままEVの普及が進み、ガソリン車を駆逐するとの判断は時期尚早かも知れません。2030年におけるEVの普及率は、金融機関がまとめた予測では20%と高水準な一方、石油業界の調べでは1%と低いようです。各々の業界事情により見据える数字が異なりますが、平均して10%前後にとどまるとの見方が主流のようです。

EV普及の条件に車両価格の低下がありますが、技術開発や量産が進むことで電池コストが下がり、比較的短い期間でEV本体の価格低下が進むと見込まれます。一方、ガソリン車の給油と比べて長い充電時間や、不足しがちな充電インフラの問題解決には時間を要すると思われます。

また、充電の規格が日本と欧米のメーカーで異なることも課題です。充電規格の業界標準獲得へ向けて、自動車産業を越えた業務提携が進み、主導権争いが繰り広げられています。当面は、EV、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車と、さまざまな駆動方法が乱立しながらも、電動車両へのシフトが着実に進むと見込まれます。

業界のプレーヤーが一変する可能性

電動車両の普及に向けてカギとなる技術に、電池とモーターが挙げられます。特に電費の向上には、消費電力が少ないモーターが不可欠です。

日本電産(証券コード6594)は小型高効率モーターで高い技術を有し、欧州のPSAグループと合弁で、EV駆動用モーターの開発・製造に関する会社設立を決定。海外の自動車メーカーや、自動車メーカーに直接部品を供給するTier1メーカーから開発要請が相次いでいるもようです。

EVにおける技術革新は自動車のコモディティ化を進め、自動車メーカーを頂点にTier1メーカー、部品メーカーへとつながる、従来の産業ピラミッドが大きく変える可能性があります。自動車業界以外の企業がTier1メーカーとなりえる展開も想定されます。

大手電子部品メーカー各社は車載向けへと舵を切り、大きな市場の取り込みに動いています。村田製作所(6981)は主力製品のセラミックコンデンサーが車載向けに需要が旺盛で、積極的に増産投資を実施しています。

高速道路で自動運転が実現

現在、国内外の多くの自動車メーカーは、2023~2025年をメドにレベル4~5の自動運転実現を目指し、開発を進めています。

ドイツのアウディは2017年10月に、世界で初めてレベル3の自動運転を実現したフラッグシップセダン「A8」を発売。高速道路における一定速度以下の条件下で、ドライバーが手足を完全に離した車が主体の自動走行を実現しており、完全自動運転が近くまで来ています。

一方、今年に入り、米国でウーバーテクノロジーズほか自動運転の試験走行中などに死亡事故が発生したことで、実走実験を自粛する企業が相次ぎ、株式市場でも関連銘柄が売られました。しかし、一連の事故は自動運転の未来を閉ざすことにはならないと考えます。

現状の自動運転の開発は、さまざまな技術水準の企業が同じ公道を用いて実験している状況にあります。今回の事故を受けて自動運転の実現へ向けた課題や問題点が明らかにされ、監督官庁による実験のルール作りが進み、安全を担保するための研究開発や投資が以前に増して活発化することが想定されます。

つながる車がカギを握る

自動運転では、周囲の状況を認識するカメラやセンサーなどの情報を用いて、人口知能(AI)による深層学習を繰り返すことで、人の眼を超えた認識と熟練ドライバーをしのぐ判断力を可能とします。

その要となるのが、車とクラウドが通信でつながるコネクテッドカーの技術です。2019年から2020年にかけて各国で導入が予定されている次世代高速通信規格5Gによる大容量通信が、コネクテッドカーの普及には欠かせません。

通信計測器大手のアンリツ(6754)は、5Gのインフラ整備へ向けて、関連計測器の出荷が本格化しています。電気興業(6706)は通信用・放送用アンテナの製造・工事を手掛け、5G向け投資の恩恵を享受すると期待されます。セキュリティ関連事業を手がけるラック(3857)は車へのハッキング防止サービスを展開し、コネクテッドカーの安全を守ります。

(文:いちよし証券 投資情報部 及川敬司)

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