はじめに

スタジオジブリの作品世界を再現するテーマパーク「ジブリパーク」の計画が愛知県で進んでいます。愛・地球博記念公園(モリコロパーク)を再整備し、名作『となりのトトロ』や『もののけ姫』をイメージした施設が点在する基本デザインも公開されました。

既に全国的な注目や期待度は高まっていますが、実現までに乗り越えるべきハードルも少なくありません。立地やその歴史を含めて、2022年のオープンまでに知っておきたいことをまとめてみました。


「ジブリさんの著作権の固まり」

4月に愛知県が公表した「基本デザイン」によれば、パークは5つのエリアで構成。「青春の丘エリア」は既存のエレベーター棟を改修、『ハウルの動く城』などに見られる19世紀末の空想科学的デザインのメインゲートとなります。周辺には映画『耳をすませば』に登場する古道具店「地球屋」が再現されます。

ジブリパークの基本デザイン(提供:愛知県ジブリパーク構想推進室)

「ジブリの大倉庫エリア」は今年9月末に営業を終える屋内温水プールの空間をリニューアル。ジブリの展示物を収蔵する倉庫や映像展示室、子どもの遊び場などを整備、イメージ図には「CAT BUS」の看板を掲げ、内部に「ネコバス」がちらりと見える建物も描かれています。

「もののけの里エリア」は『もののけ姫』の「タタラ場」をイメージさせる建物や白いイノシシ「乙事主(おっことぬし)」、クモのような「タタリ神」をモチーフにしたオブジェが。「魔女の谷エリア」には『魔女の宅急便』の主人公、キキの実家「オキノ邸」や「ハウルの城」を中心に遊具施設などが整備されるイメージ。そして2005年に愛・地球博(愛知万博)のパビリオンとして建設された「サツキとメイの家」の周辺は「どんどこ森エリア」として散策路などが再整備されます。映画ではサツキとメイが庭にまいたタネを早く芽ぶかせようと、夜中にトトロと一緒に踊る場面があり、この「どんどこ踊り」にちなんだネーミングなのだそうです。

これらを実際にどう施設として形にしていけるのか。愛知県の大村秀章知事は5月25日開会の県議会臨時議会にジブリパーク関連の一般会計補正予算案を提出。それに先立つ臨時記者会見で、総額3億7,600万円の予算を組み、今年度内に「基本構想」と基本設計を策定する方針を明らかにしました。

「これからはモノづくり。設計は大変だと思います。図面を何枚つくることになるでしょうね。例えば『地球屋』にしても、どのくらいの大きさで、屋根や壁の材質はどうするか、調度品をどうするか、ネコの人形『バロン』はどうするか。すべて図面にしていかないと」

サツキとメイの家の建設時は昭和30年代という時代設定に合わせて、当時のガラスを探し出したり、展示するランドセルの寄付を募ったりした例があります。大村知事は「今回もそうした時代設定があればそれにこだわるものもあるだろうし、新たにつくるやり方もある。さまざまな課題が出てくるでしょう」。他にもジブリの世界観づくりに欠かせない樹木の植生計画や、生育のための土壌改良なども検討していくそうです。

また、同時にパークの運営手法についても調査、検討を進めるとして次のように述べました。

「すべてジブリさんの『著作権の固まり』ですから、通常の公園のように県が直轄でやるのにはなじまない。何かしたいときにいちいちジブリさんにお伺いを立てるわけにはいかないですから。ジブリさんが中心になって運営するのが一番だと思うが、それを含めてどういう形で運営するのかを決めていきたい」

愛知県とスタジオジブリが3月30日付で交わした確認書によれば、事業主体は県、デザイン作成や全体の企画監修をスタジオジブリが担当することになっています。来場者数の予測や管理運営コストの算出などもしながら、2019年度には実施設計に入り、20年度の着工、22年度中の開業というスケジュールを目指します。

「期待に応えられるように、しっかりとしたものを、できるだけスピーディーにまとめたい。ジブリ作品は日本を代表して世界に発信できるコンテンツであり、文化でもある。『夢だけど、夢じゃなかった』と言ってもらえるようなパークを実現したい」と大村知事は強調しました。

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