問われ続ける「開発と保全」のバランス

ジブリパークが「理念を継承」する愛知万博は当初、愛知県瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」と呼ばれる里山の約540ヘクタールを切り開いて会場にする計画でした。開催後は、跡地をニュータウンとして市街地化、里山を走る都市計画道路も通す予定でした。

しかし、海上の森では希少種のオオタカの営巣などが確認され、「環境」万博の理念に反するとして市民団体や専門家から開催反対の声が上がります。博覧会国際事務局(BIE)も跡地開発を批判して計画の抜本的な見直しを求めました。

その結果、メーン会場は隣接する長久手市(当時は長久手町)にあった「愛知青少年公園」の158ヘクタールを利用することに。海上の森の開発は最小限にとどめ、15ヘクタールをサブ会場(瀬戸会場)とすることで最終決定がされました。

愛知青少年公園には南に森がありましたが、そこには手を付けず、既存のテニスコートや野球場などを利用。地形や植生もできるだけ変えないよう、細い柱で回廊を持ち上げる「グローバル・ループ」が会場内の主要通路として造られました。その他にも、当時の緑化や省エネなどの最先端技術が「自然の叡智(えいち)」という理念の下に取り入れられました。会場までのアクセスは日本初のリニアモーターカーの実用路線「リニモ」を整備。名古屋駅からは市営地下鉄とリニモを乗り継いで最短45分ほどで行けるようになりました。

こうして当初は危惧や混乱が目立った万博も、2005年3月から185日間の会期で2,200万人を超える来場者数を達成し、入場料などの利益から最終的に約65億円の剰余金を残すほどの成功に終わりました。そして閉幕後、長久手会場は公園として再整備され、2006年7月に第1期、07年3月に第2期工事が完了。サツキとメイの家やグローバル・ループの一部など、万博関連施設を10カ所ほど残したうえで、新たに「地球市民交流センター」などの施設も造られていきました。

現在は公園内への入場は無料で、施設ごとに入場料や利用料が設定されています。サツキとメイの家は大人510円、4歳から中学生までは250円(20人以上は団体割引あり)。1回約50人が30分ごとに入れ替わりで入場。時間帯によって当日券もありますが、土日は予約なしでは入りにくいほどの人気が持続しています。

愛知万博時に建てられ、今も展示施設として人気の「サツキとメイの家」

一方、園内は大部分が森林で、イベントのない平日は人もまばら。逆にのんびりと散策したり、自然観察を楽しんだりできます。

個人的なおすすめはレンタサイクル。自転車1台100円で、全長約5キロの広々としたサイクリングコースを一方通行で走れます。晴れた日に木もれびの中を駆け抜けるのはとても爽快。ところどころきつい坂道もありますが、サツキとメイの家をはじめ各施設に立ち寄って見学や休憩もでき、子どもはいつも大喜びします。

ジブリパークとして生まれ変わるモリコロパークの全景

人によってはこうした身近で穴場的な公園の雰囲気が、ジブリパークで変わってしまうと心配するかもしれません。園全体に入場料がかかる可能性は低いようですが、これまで気軽に立ち入れた場所が有料エリアになることもあり得るでしょう。県ジブリパーク構想推進室は「そうした点も含めてこれからの検討事項」とします。

基本デザインでは「都市公園としての機能や自然環境を損なうことなく、公園の歴史的成り立ちや皆様の思いなどにも配慮し、万博後の未利用地や既存施設を有効活用する」との方針も示されていますが、「開発と保全」のバランスが再び問われることになるでしょう。

地元出身、鈴木プロデューサーの役割

現在の公園利用者は年間160万人前後。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが毎年発表する「東海3県主要集客施設・集客実態調査」によれば、2017年度は約162万人で全体の15位。1位のナガシマリゾート(約1,530万人)、2位の刈谷ハイウェイオアシス(約884万人)と比べれば遥かに少ないですが、11位の名古屋城(約190万人)、21位の名古屋市科学館(121万人)などと比べると、単純な集客数として決して見劣りはしません。万博から10年の節目で「ジブリの大博覧会」が2カ月間開かれた2015年度は約199万人で12位でした。ちなみに16年度、名古屋市港区に開業したレゴランド・ジャパンは年間の来場者数目標を200万人としていましたが、実際は数字を発表せず、ランキングにも現れていません。

レゴランドの経済効果などを試算した地元のシンクタンク、中部圏社会経済研究所の難波了一主任研究員は、ジブリパークについて「現時点では分析できる材料がない」としたうえで、次のように話しました。

「レゴランドはかなり狭い層をターゲットにして、強気な価格設定が不評を招く面もありました。一方、ジブリは子どもから大人まで幅広く、熱狂的なファンが多く、この地域の観光の目玉施設になるのは間違いないでしょう。名古屋駅からのアクセスは決してよくありませんが、価格付けを慎重にすれば多少遠くても来てくれて、周辺の旅行や宿泊にもプラスになると期待できます」

構想が表に出たタイミングからも、「ジブリパークができたらレゴランドはますます厳しくなる」と懸念する声が上がりました。周辺施設との連携不足が指摘されるレゴランドに対し、ジブリパークは地元出身の鈴木敏夫プロデューサーが思い入れをもって、まさに総合プロデューサー役になると期待される点も違います。そのメリットを生かして相乗効果を生み出せば、レゴランドを含めて地域全体が活性化するはずです。

ジブリ作品のキャラクターにもいる、取らぬタヌキの…ではありますが。