はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は横山光昭氏がお答えします。

昨年流行っていた仮想通貨への投資を、遅ればせながら始めてみたいと思っています。かなり儲けている人がいて、“億り人”も多く出たということですから、とても期待しています。自分もたくさん儲けられるようになりたいです。ただ、投資は初心者で、本当に仮想通貨を始めても大丈夫なのだろうかという不安も少しあります。

仮想通貨に投資をしていく場合、何をどう勉強していけばよいでしょうか。また、お金に困らないように仮想通貨への投資額の目安などがあれば教えてください。

〈相談者プロフィール〉
・36歳、独身
・手取りの世帯月収:28.6万円
・毎月の貯金額:4万円
・貯蓄総額:170万円


横山: 仮想通貨ですか。昨年は「ビットコイン」の価格が1年で20倍にも跳ね上がったりし、かなり儲けた人がいたと注目されましたね。そのおかげで、資産1億円を超えたことを指す「億り人」を宣言する人もいました。

「お金をたくさん手にできる方法があるならやりたい」という気持ちはよくわかります。ですが、少し冷静に考えてみましょう。

仮想通貨の価格が上がる仕組みとは?

仮想通貨は、インターネット上の取引で、円やドルのようにお金として使われる電子データです。株などと同様に値動きがあるのが特徴です。

仮想通貨の需要が高まると価格は上がり、需要が下がると価格が下がる仕組みです。たとえば、1万円で買った仮想通貨の需要が高まり、20倍の20万円に価格が上がると、19万円儲かったことになります。

ですが、この価格は必ずしも上がるという保証はなく、時には価値が0円近くまで下がってしまうこともあります。いわば、ハイリスク、ハイリターンな投資というよりも、一瞬での儲けを狙う「投機」になります。

最近では、儲かるという話を聞いて飛びついた人たちが大損をしたという話もありますから、投資初心者には向かない投資だと思います。

収入のいくらを投資に充てる?

投資を始める前には、生活費として手取り収入の1.5ヵ月分、万が一に備えた生活防衛資金として6ヵ月分を、最低でも預金や現金で準備しておこうと話しています。

ほかにマイホーム資金や教育資金が必要な場合は、別に準備する必要があります。これらの準備ができて初めて、「余裕資金ができた」といえる状態になるのですが、投資を始めるためにここまで待てないという人も多いでしょう。そのため、投資と貯蓄を並走させていくという方法もおすすめしたい方法の1つです。

収入は消費に70%、浪費に5%、投資に25%使うのがよい家計バランスですが、その投資の25%のうち、5分の2を使う投資として「自己投資」に、5分の3を預貯金や投資などの「貯める投資」に充てるとバランスがよいと考えています。

ごく少額で投資、“お楽しみ程度に”捉えて

もし、あなたの貯蓄が先ほどの合計7.5ヵ月分を満たすほど十分あるのなら、この投資のなかの貯める投資部分を仮想通貨の購入に充ててもよいかもしれないでしょう。ただ、教育費などほかの資金が必要な人や、そもそも貯蓄が十分にない人はそうはいっていられません。

本来は貯める投資部分である5分の3のうち、自分なりに配分を決めて貯蓄と投資をしましょうと話しますが、リスクの高い仮想通貨に限っては、お楽しみ程度に捉えておく方がよいでしょう。値動きが激しいということは、儲ける可能性もありますが、簡単に財産を失う可能性もあることになります。

また、まだ記憶に新しい580億円相当の仮想通貨を流出させ、多くの方に損失をもたらした「コインチェック」のような問題も起こらないとは限りません。

「仮想通貨は儲ける」という一面ばかりを見ず、リスクもしっかりと調べ、理解し、それでもやるというのであれば、自分が許容できる上限を決め、その範囲でやってみるとよいでしょう。できれば、ごく少額で行うことを意識してください。

本来は、投資を始めるのであれば投資信託を積み立てるなど、リターンは少ないけれどリスクも少ないものから始め、投資について学びながら投資対象の幅を広げていく、というやり方の方がよいかもしれません。

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