はじめに

スピード違反も不公平!?

「スピード違反についても、同じような逃げ得が存在します」とさらに今井さんは指摘します。なぜなら、スピード違反にも、反則金(任意)や罰金(命令)の支払いをしなくて済んでしまう方法があるからです。「略式裁判を拒否する」というのが、それです。

「青切符(30km未満の速度超過)は反則金、赤切符(30km以上の速度超過)は罰金になりますが、略式裁判を拒否して正式裁判を求めれば、酒気帯び運転などの悪質なケースでない限り、ほとんどが不起訴になります。つまり、違反者は結果として、裁判もお金の支払いもしなくていいことになります」。

通常、運転者が略式裁判の手続きに応じない場合、起訴されて正式裁判になるか不起訴になるかのどちらかです。しかし、起訴されるケースは前述したように、酒気帯びで物損事故を起こしたり、無免許運転をするなど悪質なケースがほとんど。

「その他のものに関しては、おそらく、検察や警察にとって本式裁判までして処理するのは大変だから、多くを不起訴にしてしまうのでしょう」。事実、2016年は起訴が7901件(6.2%)なのに対し、不起訴は12万292件(93.8%)となっています。

これは、スピード違反の自覚がなかったり、納得できない場合、しっかりと対抗する権利と手段があるということですが、一方で、違反した自覚がある人が、ペネルティから逃げている場合もあるのです。やはり、どこか不公平感はぬぐえません。

簡単に納得しないことが対策

そもそも、スピード違反は1kmでもオーバーしたらいけないというのが原則のはずです。しかし、日本では9kmオーバーくらいではまず捕まることは少ないと今井さんは言います。

一般市民としては「ルールなんだから、捕まえるなら全員もれなく捕まえて、罰則を与えるのが筋ではないか?」と言いたくなります。

とはいえ、「1kmオーバーで全員を捕まえるのは現実的ではありません。それに、警察としても、本当に危険なドライバーだけを取り締まっていたら、検挙率が下がってしまう。一方で、みんなが無意識に違反してしまうような状況や場所で待ち、実際の違反者の半分も捕まえられれば、検挙率が上がるし、それはそれで抑止力にもなります。つまり、警察には警察で現状の取り締まり方に合理的な理由があるのです」。

もちろん、だからと言って、無為に警察に従うのではなく、「なぜ、こんなことで捕まるの?」と思ったら、しっかりその理由を警察に確かめたり、自分でも「本当にこれで反則金を取られるのか?」などを調べたりすることは非常に重要です。警察がいつもその場で正しい判断をしているとは限らないからです。

例えば、今井さんは、「まずは違反したことを認めるようサインをさせられる時に、その書面の内容をよく確認をすること」だと言います。その上で、「サインするかしないかの二者択一ではないことを覚えておくべき」だと強調します。

「具体的には、納得できない部分には二重線を引いて削除・否定した上で、サインをするといった方法があります」。警察の対応にただ愚痴を言ったり、不満を溜め込むのではなく、自分が納得していないことはしっかり主張する。その心持ちがまずは大切だと言えそうです。

今井亮一(いまい・りょういち)
交通ジャーナリスト。交通事件を中心に裁判傍聴を重ね、交通違反・取り締まりを専門に各メディアでコメントや執筆を行っている。著書に『最新情報2014-2015 警察は教えてくれない135の必須知識 なんでこれが交通違反なの!?』(草思社)ほか。ブログ「今井亮一の交通バカ一代!」

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