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期待のiPhone X不振で「有機EL」の勢力図は変わる?

中国メーカーが工場建設ラッシュ

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新世代のパネルとして注目されている有機ELパネル。中国のパネルメーカーが次々と巨大な工場の建設を始める動きを見せています。

有機ELをめぐっては、昨年発表されたiPhone Xが採用したことで、今後のスマートフォンは有機ELに代わると期待されていました。しかしその後、iPhone Xが想定以上の販売不振に陥ったことで、その先行きが懸念されています。

次世代液晶パネルの未来はどうなるのでしょうか。


有機ELへの投資が活発に

スマホ分野での有機ELは現在、韓国のサムスン電子が9割以上のシェアを持っています。有機ELパネルの特徴は、とにかく画質が美しいこと。そして、従来の液晶パネルと違い、薄いプラスチック上でパネルを製造することができるため、平面だけでなく、曲面への適用も可能になるという特長があります。

この有機ELパネルの最新工場は1ヵ所建設するのに5,000億円もの巨額な資金が必要なのですが、これから3年間で中国メーカーが次々と10ヵ所の工場建設を始めるようです。今年5月、中国で有機ELの生産技術で一番先行しているビジョノックスが新工場を稼働させました。

また、液晶パネル世界最大手である中国のBOE(京東方科技集団)も、国内4ヵ所に有機ELの工場を新設します。それ以外の中国メーカーの投資計画を含めると、中国での有機ELの生産能力は供給過剰になるといわれるほど生産能力が増えることになります。

逆にいえば、これで有機ELはこれからのスマホ、そしてテレビではどんどん使われるということになりそうです。

日本メーカーは生産量では追い付けない

こうした動きと並行して、日本企業にもある動きがありました。ジャパンディスプレイが6月26日、有機ELパネル工場を200億円でJOLEDに売却すると発表したのです。この報道を受けて、ジャパンディスプレイの株価は上昇しました。

ジャパンディスプレイはもともと産業革新機構の手でソニー、東芝、日立製作所のディスプレイ部門が統合されてできた国産液晶パネル会社。もう一方のJOLEDはソニーとパナソニックの有機EL部門を統合してできた会社です。

このニュースからわかることが、いくつかあります。まずジャパンディスプレイにとっては有機ELの開発が経営上の負担になっていたということ。それを売却して従来型の液晶製造に専念できることになったら、途端に会社の株価が上昇したというのが1つ目のポイントです。

次に、有機ELの国産勢ではJOLEDが唯一の有望企業ですが、この会社も規模的には300人以下と、世界の大手と戦う規模にはないということ。中型の有機ELパネルにフォーカスすることで生き残りを目指しているものの、中国勢のような5,000億円規模の巨額投資を行えるほどの体力はないということです。

日本メーカーは生き残れるか

日本でもこれからNHKが4K放送を始めるなど、本格的に大画面有機ELテレビの新時代が訪れそうです。パナソニックとソニーはそれぞれ大画面の有機ELテレビを発売しています。

ところが、子会社のJOLEDは大画面の有機ELパネルの製造までは手が回らないのです。そこでパナソニックもソニーも、大画面テレビ向け有機ELは韓国のLG電子から供給してもらっている、というのが実情なのです。

そう考えると、スマホでも大画面テレビでもパネルはどんどん有機EL化していくのに、日本企業の出番は大きくないということになってしまうのでしょうか。実はここに2つの希望があります。

1つは、大画面有機ELテレビはたとえパネルが同じLG電子製でも、画質コントロール技術で画質の大きな差が生まれるという特徴があることです。

よくインターネット通販の画面上で見た色と実際に届く商品の色が違うという話がありますが、これは液晶画面で表示される色がディスプレイごとに微妙に違うからです。有機ELはさらに高精度であるがゆえに、画質コントロールエンジンの違いで色の出方が大きく変わります。

だからパネルが同じでも、LG電子製、パナソニック製、ソニー製で有機ELテレビの画質競争が起き、そのことで大画面テレビの市場シェアが動くということが起きそうなのです。

日本勢の意外な勝ち残り方

もう1つ重要なことは、有機ELパネルの開発競争で一番重要な要素は素材と製造装置だということです。

これから先、より大画面で、ないしは曲面で薄い有機ELパネルを作ろうとしたら、そこで用いるプラスチック素材がそれを実現するカギになります。製造時に400度くらいになる温度に耐えて、しかも歩留まりよく製造できる薄型素材に何を用いるか、ここが素材メーカー各社の腕の見せどころになります。

また、JOLEDが強みとして持っているのが、パネルの生産についての印刷方式という技術です。これは、従来型の蒸着方式の3分の1ぐらいのコストでパネルを生産できる方式として注目されています。

そして最も重要なことは、この素材を提供するメーカーも、製造装置を開発するメーカーも、どちらも日本企業が優勢だということです。

話をまとめると、これから先、スマホも液晶パネルも有機ELという新方式の製品が世の中の主流になりそうです。そしてその有機EL生産の最大手は、スマホではサムスン、大画面テレビではLG電子と、韓国勢が強い。しかしそこに中国の液晶パネル各社が大型投資をすることで、中国が韓国をひっくり返そうとしています。

これによって、次世代液晶パネルは韓国製ないしは中国製が世界の主流になることは確実です。しかし、それを支える素材と製造装置は日本製だということ。そして、大画面テレビの最終製品はやはりパナソニックとソニーという日本を代表する家電メーカーの製品が世界で勝ち残る可能性が残っているということが、日本にとっての希望なのです。

(写真:ロイター/アフロ)

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