はじめに

顧客満足度のカフェ部門トップはカフェ・ベローチェ。2位がドトールコーヒー、3位がコメダ珈琲店――。日本生産性本部・サービス産業生産性協議会が6月27日に公表した顧客満足度指数(JCSI)ランキングの速報結果です。

顧客満足度が高そうなカフェというと、何となくスターバックスやコメダを想像しがちですが、過去9回の調査でスタバがトップになったのは2014年の1回だけ。2015年が3位、それ以外の年はすべて4位以下です。コメダもトップは2013年の1回のみ。2017年、2018年が3位で、それ以外の年は4位以下です。

これに対し、ベローチェは今回も含めてトップが4回、2位が4回、4位が1回。ドトールは今年こそ2位でしたが、2015年から2017年まで3年連続トップです。調査結果を細かく見ていくと、一般的なイメージだけでは量れない、消費者のシビアな視線が浮かび上がります。


スタバのスコアが伸び悩むワケ

毎年恒例となっているJSCI調査は、業種ごとに1年かけて6回に分けて速報値が公表され、3月下旬に確定値で業種横断的にまとめた総合ランキングを発表しています。今回公表されたのは第1回分(回答者数2万2,831人)。コンビニやホテル、飲食とともにカフェのランキングが公表されています。

ランキングの対象に選ばれているのは、カフェ・ベローチェ、ドトールコーヒー、コメダ珈琲店、スターバックス、タリーズコーヒー、サンマルクカフェ、ミスタードーナツの計7ブランド。ランキングは以下の6つの指標ごとに作成されています。

(1)顧客期待: 利用者が事前に持っている印象や期待、予想
(2)知覚品質: 実際にサービスを利用した際に感じる品質への評価
(3)知覚価値: ずばり、コストパフォーマンス
(4)顧客満足: 利用して感じた満足の度合い
(5)推奨意向: 利用したサービスの内容について、肯定的に人に伝えるかどうか
(6)ロイヤルティ: 再利用意向

顧客満足はそれ以外の5項目をスコアリングして算出しているのではなく、総合的に判断してどうか、ということで調査対象者にヒアリングしています。

実はスタバは顧客期待、知覚品質、推奨意向の3部門でトップなのですが、知覚価値では上位4位にも入っていません。つまり、コスパのスコアが低く、顧客満足度を下げている原因は、やはり価格のようです。

スタバは他のブランドに比べて、図書館の自習室代わりに利用しているように見える人を多く見かけます。電源設置率が高いことも原因なのかもしれません。飲食だけ済ませて席を立つ人はあまり見かけませんから、いったん席が埋まるとなかなか空きません。

したがって、あの価格でなければ見合わないということなのかもしれませんが、テイクアウトも店内飲食も価格は一緒ですから、その分のツケはテイクアウト組も分担していることになり、利用者は「やっぱり高い」と思っていることが見て取れます。

ベローチェが急上昇した理由

サービス産業生産性協議会によると、カフェは従来から他の部門に比べると上位と下位のスコアにほとんど差がないそうです。利用者にはそれぞれに好みがあり、使い分けられているということでしょう。

それでも、ベローチェのこの2年のスコアの伸びは突出しています。2016年は71.6でしたが、2017年は73.0、そして今年は75.6です。

原因は何なのでしょうか。サービス産業生産性協議会では原因分析までは行っていないので、当事者であるベローチェの運営会社・シャノアールに聞いてみたところ、「まだ速報値の段階であり、厳密な分析はこれから」だそうです。

それでも食い下がって、思い当たるところを聞いてみたところ、「おそらく近年強化しているホットフードが評価されているのでは」とのこと。サンドイッチなどのチルドフードや、常温の菓子パンなどではなく、「カマンベール・ハムサンド」や「粗挽きオールポーク・ドック」など、注文が入ってから温め、焼きたて状態で提供するフードです。

スタバに比べると種類が豊富です。価格はスタバの類似製品と比べると数十円安いだけですが、ドリンクと合計すると、少なく見積もっても200円近い差になります。

ソファを置いたりクッション性にある座席があったりと、居住性でもスタバと同等の店がそこそこあるので、支持されているのかもしれません。

独自の分煙システムも奏功?

ベローチェは近年、独自の分煙システムを導入。改装の都度、装備しており、現在192店舗中171店舗で設置が済んでいます。

筆者は以前、ベローチェにはなかなか足が向きませんでした。分煙が中途半端で、店内がタバコ臭いことが多かったからです。タバコの臭いから解放されるというだけの理由でスタバを利用していたので、高い対価は“空気を買うコスト”と割り切っていました。

しかし、この分煙装置の効果でしょうか。最近は店内に入ってもタバコの臭いに悩まされることがなくなったので、頻繁に利用するようになりました。

一般的に、飲食店の経営者は目の前の喫煙者の顧客に逃げられることを恐れ、店内の完全禁煙に反対しますが、禁煙にしていないせいで発生している機会損失には無頓着です。

シャノアールはこの2年ほどの大幅なスコアアップについて、分煙システムの導入やソファ席の設置などによる居住性アップはさほど影響していないと考えています。どちらも最近始めた施策ではなく、改装のタイミングで地道にコツコツ実施してきたからです。

しかし、筆者はこの強力な分煙システムも奏功しているのではないかと思っています。喫煙可能だった店が完全禁煙もしくは完全分煙になっても、そのことが嫌煙層に周知されるにはかなりの時間がかかるのではないでしょうか。そもそも寄りつかないようにしているのですから、なかなか変化に気付きません。 

今でも「ベローチェはタバコ臭い」と思っている方も、一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

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