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がん治療に第4の道?「免疫療法」で注目の新薬企業

「免疫チェックポイント阻害薬」の効用

生涯で日本国民の2人に1人がかかると言われている「がん」。 その治療に今、もともと体に備わっている「免疫」という仕組みを活用した新薬が開発され、注目を集めています。

がん細胞は、正常な細胞の遺伝子が変化してできた異常な細胞で、体内でどんどん増えていこうとします。一方、がん細胞は免疫によって異物と見なされ、体から取り除かれていきます。

それではなぜ免疫があるにもかかわらず、がん細胞が増えてしまうのでしょうか。実は、がん細胞自身が性質を少しずつ変化させて、免疫による攻撃から巧みに逃れているのです。

がんの従来の治療法、いわゆる3大治療法としては、がんを切り取る「手術」、がんに放射線を当てる「放射線療法」、抗がん剤などの薬を用いる「薬物療法」があります。そして今、第4の治療法として、体に備わっている免疫の力を高め、がんを攻撃する「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる免疫療法が注目されています。


がん免疫療法の歴史

がんに対する免疫療法の歴史は、1890年代にがん患者に対して細菌を投与し、体の免疫反応を活発にすることで、がんを小さくする方法を発見したことに始まります。

1950年代~70年代になると細菌由来の成分でつくられた「非特異的免疫賦活薬」が開発され、80年代には体の免疫の働きを刺激する物質として「サイトカイン」を投与する治療法がスタート。また、体に悪影響を与えないように、弱くしたがん細胞を投与して免疫力を高める「がんワクチン療法」なども試みられてきました。

免疫チェックポイント阻害薬とは

これまでの免疫療法では、免疫機能の攻撃力を高める方法が中心でしたが、最近になって、がん細胞が免疫の働きにブレーキをかけ、免疫細胞の攻撃を阻止していることがわかってきました。

そこで、がん細胞によるブレーキを解除することで、免疫細胞の働きを再び活発にして、がん細胞を攻撃できるようにする新たな治療法が考えられました。そのブレーキ部分を免疫チェックポイントと呼び、がん細胞が表面に出すたんぱく質「PD-L1」と、免疫細胞の表面にあるたんぱく質「PD-1」の結合を指します。これを阻害する薬である「免疫チェックポイント阻害薬」が開発され、実際の治療で使用されるようになっているのです。

タイプ1:「PD-1」と結合する薬

免疫チェックポイント阻害薬のうち、小野薬品工業(銘柄コード4528)が開発した「オプジーボ」と、米製薬会社メルクが開発した「キイトルーダ」は、免疫細胞の表面にあるたんぱく質「PD-1」に結合して、このブレーキをはずし、免疫細胞のがん攻撃力を再び高める働きをします。

「オプジーボ」は皮膚がんの一種である悪性黒色腫、非小細胞肺がんなどの治療薬として、「キイトルーダ」は非小細胞肺がん、尿路上皮がんなどの治療薬として国内で製造・販売の承認を取得しています。

タイプ2:「PD-L1」と結合する薬

また、スイス製薬会社ロシュが開発した「テセントリク」と、米製薬会社ファイザーとスイス製薬会社メルクセローノが共同開発した「バベンチオ」は、がん細胞が表面に出すたんぱく質「PD-L1」に結合して、このブレーキをはずし、免疫細胞のがん攻撃力を再び高める働きをします。

「テセントリク」はロシュ傘下の中外製薬(4519)が非小細胞肺がんの治療薬として、「バベンチオ」は皮膚がんの一種であるメルケル細胞がんの治療薬として、国内で製造・販売の承認を取得しています。このほか、英製薬会社アストラゼネカが開発した「イムフィンジ」なども、このタイプの免疫チェックポイント阻害薬です。

他の薬剤との併用で新たな可能性

ただ、現在の免疫チェックポイント阻害薬が効くのは一部の患者に限られています。この割合を高めるため、製薬会社は別の免疫薬などとの併用試験を数多く実施しており、その結果が注目されています。

メルクは本年3月、「キイトルーダ」とエーザイ(4523)が開発した抗がん剤「レンビマ」の併用療法の開発を強化すると発表しました。腎細胞がんを対象とした併用療法に関する第3相臨床試験が日本、米国、欧州で進められています。

小野薬品工業は本年4月、腎細胞がんを対象とした「オプジーボ」と、米製薬会社ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が開発した免疫チェックポイント阻害薬「ヤーボイ」の併用療法について、米国で承認を取得したと発表しました。「ヤーボイ」は、がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化し、がん細胞を殺すよう働きかける作用があります。この2薬の併用療法による臨床試験では、腎細胞がんに効果のあった患者が41%に達しました。

また、中外製薬は「テセントリク」と自社が販売する抗がん剤「アバスチン」などとの併用療法に力を入れています。現在、乳がんなどを対象に併用療法の臨床試験が国内で進められており、今後の展開が期待されます。

(文:いちよし証券 投資情報部 碓氷広和)

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