はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は高山一恵氏がお答えします。

税制上は、結婚していたり子どもがいたりする方が控除等のメリットが多いと思いますので、どうせ結婚して子どもを育てるのであれば、早く結婚した方が得だと思います。私は両親が25歳の時の子どもなのですが、25歳で結婚して子どもを育てるのと、40歳で結婚して子どもを育てるのとでは、経済的にどのくらい差が出るものでしょうか。
(35歳 独身 男性)


高山: ご質問ありがとうございます! 最近は晩婚化が進んでおり、40代で結婚、子どもを授かる人も多くなってきています。

経済的な側面から40代で結婚、出産する場合と、20代で結婚、出産する場合を比較すると、40代は人生の前半には余裕がありますが、後半では余裕がなくなっていき、20代は人生の前半には余裕がありませんが、後半では余裕がでてきます。

とはいえ、その人の収入や貯蓄状況、仕事のスキルなどによっても個人差があるのは事実。今回は、具体的な金額というよりは、40代で子どもを授かるケースと20代で子どもを授かるケースで、マネープランを考えるにあたり大切なポイントをお話ししていきます。

人生の後半に余裕がでる早婚、前半に余裕がある晩婚

一般的に20代で子どもを授かるのと、40代で子どもを授かるのとでは、人生の前半で余裕があるか、後半で余裕があるかの違いが出ます。

20代は社会に出てからの期間が短く、収入も貯蓄も多くないため、そこに子どもを授かると、毎月の生活費に加えて養育費も加わり、家計に余裕がないでしょう。毎月のおむつ代やミルク代も家計を圧迫します。

一方、40代は、それなりにキャリアを積んできた人であれば、役職にもついており、年収も高め。貯蓄もそれなりにある人が多いでしょう。子どもを授かっても経済的な余裕があるため、養育費が加わっても家計への影響はさほどありません。また、子どもにお稽古事をたくさん習わせるなど、教育にもお金をかける傾向があります。

ですから、一見、40代以降に子どもを授かる方が経済的には余裕があるように思いますが、問題なのは“退職するまでの期間”です。

たとえば、子どもを40歳で授かったとすると、子どもが大学に入学するときには58歳、子どもが大学を卒業するときには定年退職を迎えることに。その後、働けたとしても現役時代と同じ収入が確保される可能性は低いため、それまでの生活を維持できなくなってしまいます。

一方、25歳で子どもを授かった場合では、子どもが大学に入学するときには43歳、子どもが大学を卒業するときには47歳です。となると、まだ13年以上も現役で働ける期間があるので、そこから将来に向けて貯蓄することも可能です。

40歳以上の子育てスタートは三大費用が重くのしかかる

40代以上で子どもを授かった場合に、意識して貯めていきたいのが「老後資金」です。

というのも、子どもが大学を卒業してから定年を迎えるまでの期間が短いので、子どもが大学を卒業するとすぐに老後がやってきたり、ケースによっては子どもが大学入学前に定年の方が先にやってきたりします。

にもかかわらず、子どもの教育にお金をかけたり、生活レベルが高かったりするので、老後の準備が十分にできないことも少なくありません。加えて、住宅ローンがある場合には、定年退職を迎えるまでに住宅ローンの完済が終わっていないと、老後に住宅費用も重くのしかかってきます。

また、問題なのは、40代の場合、親の年齢も上がるため、子どもに手がかかる時期に介護が発生することも。その結果、夫婦のどちらからが仕事を辞めざるを得ない、または自費の介護サービスを頼むことになり、家計の負担が増えてしまうことになります。

40代で子どもを授かった場合には、その時に経済的余裕があるとしても油断せず、しっかりと計画を立てて貯蓄していくことが大切なのです。

長期的な将来ビジョンを描き、マネープランの検討を!

こう見ると、40代以降に子どもを授かると、人生の後半に大きな資金が必要なライフイベントが集中するため、目先のマネープランだけを考えるのではなく、長期的な将来のビジョンを描き、マネープランを考えることが必要です。

ただし、今後は20代といえども油断は禁物です。というのも、ひと昔前のように、年齢を重ねればお給料が右肩で上がる時代ではないので、子どもが増える分かかる費用が増えても、お給料の上昇分で増えた費用分をカバーすることができず、いつも家計に余裕がないという状況が起こります。

また、今後は、今まで以上に生産性が重視され、個々の能力が問われる時代です。年齢が若いからというだけで仕事が保証されるとは限りません。

ですから、20代で子どもを授かっても、40代で子どもを授かっても、長期的なマネープランの作成に加えて、働き方についても考え、将来に備えていく必要があります。

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