はじめに
全国的に猛烈な暑さが続いています。今年の夏は猛暑のピークが2回来るようで、1回目はまさに今が真っ最中、2回目は8月下旬から9月上旬までということです。あと2ヵ月近くもこの暑さと付き合っていかなくてはいけないのですね。
こうも暑いと、何もする気が起きなくなってしまいます。異常な暑さが経済にどのような影響を与えるのか、今回は気温ではなく、日照時間を使って分析していこうと思います。
日照時間も長くなっている可能性
例年以上に今夏が暑いのは誰もが実感しているところかと思いますが、実は日照時間も長くなっています。気象庁の月別日照時間を見ると、今月は昨年比で大幅に日照時間が長くなる可能性があります。
気象庁が7月19日に公表した1ヵ月予報(7月21日~8月20日)でも、向こう1ヵ月の日照時間は、東日本から西日本の日本海側で多い確率が50%、東日本から西日本の太平洋側で平年並み、または多い確率がともに40%となっています。
ここでいう日照時間とは「直射日光が地表を照射した時間」を表しており、日照は「直達日射量が0.12キロワット/平方メートル以上」として定義しています。
具体的な話をすると、筆者は釣りをするのですが、先日は朝の4時からすでに空は明るく、照明がなくても釣りの準備をすることができ、夜の7時を過ぎたころに、ようやく暗くなったというぐらい、日照時間は長くなっています。
太陽は人々の消費を促す
日照時間は経済活動にどのような影響を与えるのでしょうか。前述の通り、直射日光が地表を照射する時間が日照時間ですから、日照時間が長ければそれだけ気温も上がると考えられます。
ここ最近のように日照時間が長くなり、気温が高くなりすぎると、外に出るのが嫌になるので、人々は消費をしなくなるような気がします。一方で、暑ければ暑いほど、飲料やアイスクリームを買ったり、クーラーや扇風機が売れるようになるので、むしろ消費は伸びるのかもしれません。
下図は、夏を7月から9月と定義し、各年夏の3ヵ月間の物価を調整した実質的な家計の最終消費支出と、東京・大阪・名古屋3都市の平均日照時間について、それぞれ前年同期比での増減をグラフにしたものです。
完全に一致しているわけではありませんが、日照時間の長さと家計の消費がある程度、連動していることがわかるかと思います。
日照時間と消費が連動するカラクリ
実は今回、日照時間の部分を平均気温にした場合の分析もしてみました。日照時間が長ければ気温も上がるわけですから、どちらも同じ結果が導かれそうなものです。
しかし、同条件で分析をすると、気温と消費の間にはそこまでの相関が見られない一方で、日照時間と消費の間にはそれなりの相関関係が見られたのです。
気温より日照時間のほうが消費と相関関係が強い理由として、明るい太陽の光を浴びると、脳内で気分を落ち着ける役割を持つ「セロトニン」という物質の作用が増強するという話もあります。その影響で消費が増えるということもいえるのかもしれませんが、実際のところはもう少し統計を見る必要があります。
カギは日照時間が長いケースより、短いケースにありそうです。日照時間が短い場合、それは梅雨など雨が続けて降っているケースが考えられます。この20年間を見てみると、7月の日照時間が前年比で大きくマイナスになったのは2006年と2009年があります。
東京の日照時間は、2006年7月は前年比43%減、2009年7月は同38.5%減となっています。この2年は梅雨明けの遅れなどもあり、7月の日照時間が大きく前年比でマイナスとなったわけです。
その結果、翌月の消費者物価指数の内訳を見てみると、生鮮野菜の価格がそれぞれ前年比31.3%増、同12.9%増となっていました。天候不順による生鮮食品の価格高騰が、消費を抑えたと考えられます。
気象庁の1ヵ月予報によれば、今夏は日照時間の長い年になりそうですので、小売りや食品など、強い消費がポジティブに働くセクターに投資妙味があるかもしれません。
(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)