はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は高山一恵氏がお答えします。

中古マンションの購入について悩んでいます。仕事柄、転勤の可能性もあるので、購入自体を悩んでいましたが、現在の家賃13万円が少しもったいなく感じ、駅近の流動性の高い中古マンションの購入を検討中です。現在、預貯金が1,300万円あります。毎月の支出は以下の通りです。予算や注意点、今後の住宅価格の展望などのアドバイスをお願いします。

【支出の内訳】
・生活費(居住費含め):40万円程度
・小規模企業共済:7万円
・つみたてNISA:3.3万円
・ドル建て終身保険(10年払込):5.5万円(1ドル109円換算)
※今後、掛け捨ての医療保険への加入を検討しています。

〈相談者プロフィール〉
・女性24歳、既婚(夫:個人事業主)、子ども1人
・職業:専業主婦
・居住形態:賃貸
・手取りの世帯月収:100万円
・総資産額:1,300万円


高山: ご質問ありがとうございます! 家計の状況を拝見すると、収入が多い割にとても堅実に暮らしていらっしゃるのがわかります。

中古マンションの購入を検討されているとのことですが、ご相談者さんなら住宅ローンを組んで家を購入してもしっかりと返済していけるでしょう。中古マンションを購入するにあたり、予算の考え方、注意点、物件選びのポイントなどについてお答えします。

物件購入にあたり、予算の決め方は?

まず考えなければならないのが、どれくらいの金額の物件を購入するか、つまり「予算」です。予算を決めるには、さまざまな角度から検討する必要がありますが、わかりやすいのが、現在支払っている家賃から目安をつけるという方法です。

現在、毎月13万円の家賃を支払っているとのことですが、マンションを買うと、毎月のローンの返済額以外にも管理費や修繕積立金がかかる上に、年に1度固定資産税を支払う必要があります。ケースによっては、駐車場代、駐輪場代などがかかることもあります。

もし、これらの費用を考慮せずに、家賃と同程度ならローンを返せると、毎月13万円のローンを組んでしまったら、そこに管理費、修繕積立金などの維持費が上乗せになる分、これまでよりも住居費の負担が増えてしまいます。物件にもよりますが、中古物件の場合、維持費に毎月2〜3万円程度はかかります。

たとえば、現在の家賃が13万円であれば、維持費も含めて13万円の返済になるのが理想です。仮に維持費が2万円かかるとすると、毎月ローンの返済額が11万円になるようにすると、無理なく返済できるイメージです。

ちなみに、3,600万円を金利1.5%で35年間借りた場合、毎月の返済額は約11万円になります。あくまでも目安ですが、こちらの数字を参考に予算を考えてみてください。

購入費を抑えられる反面ランニングコストが嵩む中古

相談者さんの場合、堅実に暮らしており、将来に向けての貯蓄もきちんとできているため、無理のない住宅ローンを組めば、資金的には問題ないでしょう。繰上げ返済などをしていけば、早めにローンを完済することも可能です。

中古マンションを検討している点でも堅実さがうかがえます。中古マンションのメリットは、価格の安さです。首都圏では新築マンションと比較して平均成約価格に2,000万円以上の差があり、新築よりも3〜4割も費用が抑えられます。

一方で、中古マンションの場合、築年数が古いと管理費、修繕積立金などの金額が高くなり、ランニングコストが嵩む傾向にあります。基本的には、築年数が10年を超えるあたりから、管理費、修繕積立金が増えていくので、長期的にかかる維持費も考えて購入することが大切です。

また、中古マンションは、実際に足を運んで自分の目で確かめられるのも大きなメリット。外観だけでなく、日当たり、騒音の有無や部屋からの眺望、周辺環境、防災環境などもしっかりと確認してから購入するようにしましょう。

資産価値の下がらない物件選びを

中古マンション、新築マンション問わずですが、今後物件を購入する場合には、物件の「資産価値」を見極めて購入することが大切です。

現在、2020年の東京オリンピックの影響もあり、首都圏を中心に全体的に家の価格は高騰していますが、今後は少子高齢化が加速し、人口減少も進むので、物件選びを間違えると、家は資産どころかお荷物になってしまう可能性もあります。

マンションの資産価値を決める一番の要素は「立地」です。当然のことですが、誰もが住みたいと思う人気エリアにある物件は、中古になっても人気があるため資産価値が下がりにくい傾向にあります。

また、現在の状況も大事ですが、将来的にどうなっていくのかを見極めることも大切です。将来、人口減少することが確実な日本では、居住地をコンパクトにまとめようという「立地適正化計画」が進行しており、全国各地の自治体で計画されています。

これは、駅やバスターミナルなど公共交通の拠点を中心に、役所や病院などの公共施設を集約し、人員や移動などのコストを削減しようというもの。指定された地域は公共施設やインフラが充実しますが、区域外は、暮らしにくくなり、不動産の価値も下がることが予想されています。

他にも駅からの距離や耐震性、ブランド力など、資産価値を見極めるポイントはいろいろあります。家は大きな買い物なので、さまざまな角度から情報収集してから購入しましょう。

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