はじめに
子供の骨折増加には2つの背景
こういった子供時代の骨折の増加には、2つの背景が共存していると考えられます。
1つは、テレビや新聞で、しゃがめない子供や跳び箱で両手首を骨折した子供※1 、和式トイレでかがめない子供の話題が取り上げられているように、高齢者だけでなく子供時代からロコモが起きている可能性です。食生活の変化や身体活動の減少によって筋肉・骨・関節等が弱くなったり、危険を回避する力が弱くなっていることによって、骨折が増加していると考えられています。
そして、もう1つは、中学生以上でクラブ活動中の骨折が多い※2ことから推察できるように、特定の部位のみを使いすぎているオーバーユースの可能性です。身体の成長が早まったことも伴い、早くからより高度な技術を使うことによって、骨折が増加していると考えられています。
また、未就学児では、2000年頃から骨折率が低下しています。残念ながら、子供の骨が強くなったという情報は見当たらないことから、危険な遊具が減ったり、ケガをするような遊びをしなくなった等と解釈されています。
成長期の骨も弱い
図表1の骨折患者数からもわかるように、特に女性で、高齢期には骨量が急激に減少することが知られています。高齢期の骨量の減少を食い止めるのは非常に難しいため、高齢期のロコモ予防のためには、若い頃に十分に骨量を高めておくことが有効とされています。骨量を高めるためには、子供の頃から栄養の改善や運動時間の確保のほか、危険回避能力を高めるための運動や遊び必要です。
しかし、身長が伸びる時期は、骨の強さが追い付かないことがあります。成長期には、同じ部位だけ使う動きではなく、なるべく色んな動きを含む身体全体を使う動きが望ましいとされています。
1.たとえば、2014年にNHKクローズアップ現代「子供の体に異変あり~広がる“ロコモティブシンドローム”予備軍~」、2016年に産経新聞で「「⽼化」する⼩中学⽣ つまづいて⾻折 和式トイレでかがめない…」等。
2.独立行政法人日本スポーツ振興センターによる「学校の管理下の災害」によると、2018年度の小学校から高等学校までの骨折の65%が男子による。また、小学校の場合、骨折の約半数が休憩時間中、中学校以上の場合、体育的部活動中の発生が半数を超える。中学校の体育的部活動中の骨折は増加傾向にある。