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天丼の「てんや」がデリバリー店舗を倍増させる事情

28店から年内に50店へ

天丼チェーンの「てんや」がデリバリー対応店舗の増加に拍車をかけています。直営153店のうち、6月末時点の28店から年内に50店まで、ほぼ倍増させる計画です。

てんやのデリバリーサービスは、昨年7月に立川南店で実験がスタートしたばかり。それから1年余りの間に、急ピッチの拡大路線に舵を切った格好です。

なぜ、デリバリー店舗の増加にここまで力を入れているのでしょうか。そこには、てんやだけにとどまらない、ある事情がありました。


実は「ロイホ」と同じグループ

てんやのデリバリー拡大戦略の背景を読み解くには、その親会社の状況を把握しておく必要があります。

てんやを展開しているテン コーポレーションは、ファミレス「ロイヤルホスト」などを運営するロイヤルホールディングス(HD)の完全子会社。そのロイヤルHDが7月31日に発表した2018年上半期業績は、前年同期に比べて増収減益で着地しました。

ロイヤルHDは2010年に「経営ビジョン2020」という長期の経営構想を策定。「日本で一番質の高い食&ホスピタリティグループ」という目標を掲げ、事業改革を進めてきました。その集大成に当たるのが、今年から始まった3ヵ年の中期経営計画。2020年に向けて、中計初年度はスムーズなスタートを切る必要がありました。

今年の上半期が減益になった主因は2つ。1つは、「リッチモンドホテル」のブランドで展開しているホテル事業の新規出店費用がかさんだこと。ただし、これは将来の収益に直結する出費なので、悲観的なものではありません。

むしろ心配なのは、収益柱である外食事業の停滞です。同事業全体では、売上高が前年同期比0.3%減の302億円、経常利益が同4.9%減の12億9,400万円となりました。

想定を上回る客数の減少

この外食事業のうち、主力のロイホは店休日の設定など収入減につながる要素があったものの増収増益と、堅調をキープ。一方、専門店は減収減益でしたが、こちらは「シズラー」が前年4~5月に好調すぎた反動や、ホテルと同様に出店が上半期に偏ったことに伴う費用増が原因。6月には既存店売上高が回復しており、一過性の要因と見ることができます。

逆に深刻だったのが、てんやの不振です。2018年上半期は前年同期に対して減収減益。外食チェーンにとって収益に直結する既存店売上高は、3月がわずかに前年を上回っただけで、それ以外は前年割れ。上半期トータルでは前年の98.7%にとどまりました。

ロイヤルHDの黒須康宏社長も「歴史的にみれば、上半期の月商としては依然高い水準ですが、前年を下回っているのは課題だと認識しています」と認めます。

てんやが不振に陥った原因の1つと考えられるのが、今年1月に実施した価格改定です。これまで税込み500円だった天丼を同540円に値上げ。天ぷら盛合わせも同430円から同460円に価格を引き上げました。

この値上げによって、上半期平均の既存店客単価は前年同期の105.6%まで上昇しました。しかし一方で、既存店客数は同93.5%まで減少。この結果、既存店の売上高(=客単価×客数)は前年同期を1.3%下回ることになったのです。

「客単価の上昇は予想通りでした。が、客数が計画を下回りました」と、黒須社長は振り返ります。

巻き返しにあの手この手

もちろん、てんやでは下半期の挽回に向けて、策を練っています。7月26日から販売を始めた「煮穴子・めごちの海鮮天丼」など、季節商品をPRすることで来客増につなげる考えです。

さらに現在、検討を進めているのが、店舗運営システムの多様化。従来は店員が注文を取り、商品を配膳するフルサービス型の店舗が大半でしたが、立地や客層に応じて「前会計型」「セルフオーダー型(タッチパネルでオーダー)」「フルセルフ型」を加えた4タイプで展開していく、というものです。

すでに昨年11月には、新宿イーストサイドスクエア店を試験的にフルセルフ型に転換済み。お客さんが券売機で会計し、モニターで呼び出す形式に変えたところ、転換後7ヵ月間の平均人時売上高(=売上高÷総労働時間)は前年同期比38%増になったといいます。

冒頭で触れたデリバリー店舗の拡大戦略も、こうしたテコ入れ策の一環。宅配ポータルサイト「出前館」が提供するシェアリングデリバリーを導入し、新聞販売店などのリソースを活用して、配達人員を採用することなく、デリバリーサービスを展開していく考えです。

導入済みの店舗では、売上高が導入前に比べて2.7%増加しているそうです。「デリバリーは通常価格より高くなるので、そこまで需要はないかと考えていましたが、家庭で温かい天ぷらや天丼を食べたいというニーズは強いことがわかりました」(黒須社長)。

現在のロイヤルHDの中期計画は、10年間の長期経営構想の集大成であるとともに、2021年以降の“次の10年”に向けた発射台としての意味合いもあります。

ホテルや外食専門店で種まきを進め、ロイホが堅調を維持している今のうちに、てんやを立て直すことができるでしょうか。その点において、デリバリー拡大戦略はロイヤルHD全体にとっても大きな意味を持ってきそうです。

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