はじめに
世界No.1シードルが日本市場に本格参戦です。キリンビールは、オランダのビール大手ハイネケンが手掛けるシードル「ストロングボウ」を9月4日から国内販売することを発表しました。
しかし、キリンはすでに自社製造のシードル「ハードシードル」を国内展開しています。このタイミングでストロングボウの国内販売を手掛ける理由は何なのでしょうか。そこには、1年後に控える“あのイベント”の存在があるようです。
一般販売は来年春頃から
今回発売されるのは、世界首位の販売数量を誇るストロングボウシリーズのうち2商品、ゴールドアップルとダークフルーツ。前者は金色が美しいオーソドックスなシードル、後者はカシスフレーバーを混ぜた赤色のフレーバーシードルです。
アルコール分は5%程度で、すっきりとした飲み口が特徴。ビールの苦みが苦手な人やワインのアルコール度数が辛い人に好評だそうです。シードルに一番合う料理について、日本シードルマスター協会の小野司さんに聞いたところ、「リンゴのお酒なので、特に豚肉料理全般と相性がいいですよ」とのこと。
9月4日からレストランやバーで先行展開し、来年春頃から一般販売を予定しているとのこと。現在決定しているのは330ミリリットル瓶での販売ですが、将来的には缶での販売も検討するそうです。
キリンとハイネケンの合弁会社であるハイネケン・キリンのマータイン・ファン・クーレン社長は、「シードルは女性向けと思われがちですが、世界でシードルを飲む方の男女比率はほぼ5対5となっています。男性にも十分楽しんでいただける飲み物です」と話します。
ストロングボウおすすめのフードペアリング
人気の理由はヘルシー&リフレッシュ
シードルとは、リンゴを発酵させて造ったスパークリングのお酒です。欧州ではビールと並び、古くから食中酒として親しまれています。
ハイネケンの調査によると、世界でのシードル生産量は2005年から2016年で1.8倍に増加しています。また、従来から人気のあった欧州以外では、米国やアフリカ、オセアニア周辺で市場が伸びているそうです。
この理由について、クーレン社長は「特に若い世代を中心に、従来のアルコール飲料より糖分が少なくヘルシーで、そしてリフレッシュ感のある飲み物が好まれるようになってきました」と、顧客の嗜好の変化を挙げました。
国内のシードル市場は2015年からの3年で販売量が約2割増となっています(キリン調べ)。前出の小野さんは「国内のシードル流通は一昨年から増え始めた印象です。昨年からは一部リカーショップでも見かけるようになりました」と、市場の広がりを実感しています。
キリンとしては、世界No.1ブランドのストロングボウを投入することで、国内におけるシードルの商品カテゴリを確立させ、さらなる市場の拡大につなげたい狙いです。
照準は2019年のラグビーW杯
さらに、キリンビールとハイネケンにはもう1つ、ストロングボウを日本で売り出さねばならない理由があります。それは、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会です。
ハイネケンは、1995年の南アフリカ大会からラグビーW杯のワールドワイドスポンサーを務めています。来年の日本大会でも大会オフィシャルビールと並び、ストロングボウが“オフィシャルシードル”として販促をかける意向です。
ラグビーW杯を起爆剤にして需要を拡大させるために、1年前の今から販売網を構築し、知名度を少しでも引き上げておきたいところ。2019年に向けて、ストロングボウは日本市場に根付くでしょうか。
(文:編集部 瀧六花子)