はじめに
過労死という日本語は、今やkaroshiと書けばそのまま英語として通用するほど世界で認知されているそうです。
過労だけでなくパワハラまで加わり、自ら命を絶たなければならないほどに追い込まれてしまうという痛ましいニュースも報じられました。働き過ぎは、悪い意味で日本人の働き方の特徴となってしまっています。
そんな背景もあって、労働時間の削減は政府が進める働き方改革の中でも一番の目玉です。だから、労働時間の削減はすべての日本人に歓迎されている…はずです。
夫の早い帰宅を歓迎する妻は4割
しゅふJOB総研では、“配偶者またはパートナーが主に家庭の収入を支えている”と回答した主婦801名に、「長時間労働が是正されて配偶者またはパートナーの帰宅時間が早まることを希望しますか?」と尋ねてみました。結果は、以下のグラフの通りです。
有効回答数801名
「希望する」という回答が「希望しない」という回答の2倍以上。妻の多くは、夫の早い帰宅を歓迎しているようです、が…不気味な存在があります。「どちらとも言えない」40.1%。これは一体何でしょう?
早い帰宅を心から歓迎できない何らかのわだかまりがなければ、「どちらとも言えない」とはならないはず。「希望しない」と合わせると、およそ6割の妻が夫の早い帰宅を必ずしも「歓迎していない」ことになるではありませんか。
せっかく早く仕事を終えて家に帰っても、歓迎されないのはなぜ?その理由を探るべく、妻たちの心の声に耳を傾けてみました。
「どちらとも言えない」理由
「どちらとも言えない」を選んだ妻にその理由を聞いたところ、葛藤する心の声が浮かび上がってきました。以下はフリーコメントからの抜粋です。
「早く帰ってきて欲しいが、給与が減るのも困る(30代:正社員)」「早く帰宅してくれるのがうれしい反面、自分の負担が増えることもある(40代:パート/アルバイト)」「帰宅後の時間を夫婦で有意義に使えると思わないので(50代:その他)」
確かに給与の問題は切実です。残業代を当て込んで家計をやりくりしているならば、早い帰宅を素直に歓迎できない気持ちもわかります。
また、家事負担の問題。子どもたちと同じタイミングで夕食がとれる時間ならまだしも、ずれてしまうと、単純に夫の食事の支度や後片付けなどの手間が増えてしまうことになります。せめて自分のことは自分でやってくれるなら、という思いは当然あるでしょう。
それでもまだ、早く帰ってくるなら家事を手伝って!と感情をぶつけられるならいいかもしれません。既に諦めの境地にあるかのように、「帰宅後の時間を夫婦で有意義に使えると思わない」と冷静に言われてしまうことの恐怖。背筋が凍るような感覚に襲われるのは、私だけでしょうか。
年代ごとにも差
次に、年代ごとに傾向の違いは見られるのかクロス集計してみました。30代以下、40代、50代以上と分けて集計してみたところ、年代が下がるにつれて「希望する」と回答する率が増加していく傾向が見られました。中でも顕著に傾向が表れたのは、30代以下の層です。
有効回答数163名
「希望する」と回答した妻の比率が半数を超えています。「希望する」と答えた30代以下の妻がその理由を記したフリーコメントには、以下の声が寄せられました。
「家族の時間を多く持ちたいから(20代:派遣社員)」「こどもが小さいのでお父さんとの時間を大切にしてほしい(30代:その他)」「一緒に晩御飯を食べたい(20代:その他)」
これらのコメントには、夫と一緒に過ごす時間そのものを大切にしようとする妻の思いが表現されています。こんな風に思われているなら、夫もウキウキ気分で帰宅できるというものです。