はじめに

この先、人口の減少が急速に進む日本。ひと昔前のように「60歳で定年を迎えたら晴耕雨読でのんびり過ごそう」などと考えられる人は少数派で、大多数の人は定年後も何らかの仕事に就くことを想定せざるをえません。とはいえ、いま50歳前後の人にとっては、どの程度の収入を確保すればいいのか具体的にイメージしにくいため、不安を感じているのが実情でしょう。

漠然とした不安でも、放っておくとだんだん大きくなってしまうものです。定年後の備えを考えるのに早すぎることはありません。まずは、近い将来に待ち構えている5つのリスク、落とし穴を知ることからはじめませんか。

(本記事は日本実業出版社刊『定年後のトクする働き方・仕事の探し方 2018~2019』の一部を抜粋、編集して掲載しています)


毎日の生活はできても家計を陥れる落とし穴が

少子高齢化などにより、シニアの労働力が求められているのは何となくわかっても、何歳で、どんな仕事をして、いくら稼ぐのがよいのか、ピンと来ない人が多いでしょう。と同時に、60歳時点の手持ちの資産と年金だけで「老後生活が安泰」と思っている人も、ほとんどいないはずです。

実際に今働いているシニアの雇用形態は、約4分の3が契約社員や嘱託、アルバイトです。理由として多いのが、「自分の都合のよい時間に働きたいから」。多くの人は、現役時代のような働き方を望んでいないのです。

しかし、老後の出費のリスクには備える必要があります。そこで、ここでは足元をすくわれがちな「5つの落とし穴」を解説していきます。

落とし穴1. 年金だけでは生活費をまかなえない

■毎月足りない生活費➔5.5万円

50代後半にもなると、もらえる年金額も大体推測がつくため、多くの人が「年金だけでは不十分」と、老後に不安を持つものです。実際に、老後の主な収入が公的年金のシニア夫婦世帯の場合、平均的な毎月の収入が約21.2万円、支出が26.7万円で、5.5万円の生活費が不足することになります(下図参照)。

(7ページより)

もし老後までに貯蓄があまりできていなければ、この5.5万円を埋めるだけの労働収入が必要です。定年後も働き、この不足分を埋めることができれば、手持ちのお金を切り崩すことなく、万一の時の支出に充てることが可能になります。

老後にどれぐらい働けばいいかは、毎月の家計の赤字額を目安に考えるようにしましょう。

落とし穴2.年齢が上がるほど、入院日数が長くなる

■高血圧性疾患の入院期間(75歳以上)➔83.3日

年齢に比例して病気やケガのリスクは高くなり、入院日数も長期化する傾向にあります。たとえば、高血圧性疾患の場合、現役世代が入院すると13.8日のところ、75歳以上だと83.3日と、日数が跳ね上がるのがわかります(下のグラフ参照)。

(8ページより)

シニアにはさまざまな医療費の軽減措置があるものの、自己負担0円というわけにはいきません。一度病気やケガをすると、退院後も薬代や通院費が長い期間かかってしまいがちです。また、サプリメントなどにもお金を使う傾向があります。

医療費など健康に関する出費は、生活費とは別に、ある程度の準備が必要だということがわかるでしょう。

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