「モーモーチャーチャー」1個431円(税込み)、「北海道えびすかぼちゃのパンプキンプリン」1個314円(税込み)。成城石井の自家製スイーツやお惣菜はどれも、決して安くはないのに人気があります。「多少値が張っても食べたい」、そう思って買う人が後を絶たないのです。

製造過程を見てみると、職人が繰り広げる手作業の数々に、その理由が隠されていました。


成城石井の自社工場「セントラルキッチン」

南町田駅から徒歩数分、住宅街を抜けて国道246号線沿いにあるピンク色の建物が、成城石井の自家製スイーツとパンを製造する「セントラルキッチン」です。すぐ近くには、お惣菜を専門に製造する、もう1つのセントラルキッチンがあります。

工場は2つとも、24時間体制で365日フル稼働。セントラルキッチンでは、1日におよそ180種類の商品が製造されているといいます。

簡単には量産できない理由

工場内で中心となって腕を振るうのは、有名ホテルや人気パティスリーなどで経験を積んだ職人たち。見学をしてみると、製造工程のほとんどが手作業で行われていました。

まずは、「北海道えびすかぼちゃのパンプキンプリン」の製造工程を見学。かぼちゃのペーストを機械で加熱し、水分を飛ばします。そうすることで、かぼちゃそのものの濃い味わいが引き出されるそうです。

材料は、北海道産のえびすかぼちゃのペースト、砂糖(グラニュー糖)、生クリーム、牛乳、卵、ナツメグ。保存料や着色料は一切使用していません。

ペーストの状態を見つつ、作り手自ら直接材料を投入します。夏場のかぼちゃは水分量が多いため、その都度ペーストの状態を見極めて、牛乳または生クリームの水分量や焼き加減などで、かたさを調整しているそうです。

ペーストは手作業で濾していきます。気泡を掬い、丁寧に取り除きます。このひと手間を加えることで、焼き上げた時につるんとしたなめらかな表面になるといいます。

カップに流し込むのも1個づつ手作業で。もちろんカラメルも、砂糖を焦がしてつくる成城石井の自家製です。焼き時間がたった1分違うだけで、焼き上がりがまったく異なるそうです。

レシピを開発したのは、成城石井一の売り上げを誇るプレミアムチーズケーキを生み出したセントラルキッチン製造本部・菓子グループ長の光野正三さん。かぼちゃの濃厚な味わいを残したまま、プリンにするのに苦労したと話します。

「生地がかたすぎるとかぼちゃを固めただけになり、柔らかすぎるとカラメルがすぐ入ってきてしまう。この絶妙な硬さにするのに何回も試作を重ねました」

一度に作れる量は360個ほど。これを1日に2回製造します。ハロウィンの季節は、朝から晩までかかりきりで1日5,000個近くを作り上げるそうです。

パンは粉の配合から 徹底したこだわり

妥協しない姿勢はパン作りにも。セントラルキッチンで製造されるパンは1日に約25種類。粉の配合から焼き上がりまで、一貫して自社で作り上げる「ハンドスクラッチ製法」を採用しています。

製パン過程では、熟練の技が繰り広げられていました。

一次発酵を終えた後の「くるみパン」を成型する現場では、ひとつひとつを均一の重さにするために、職人が生地をちぎりながら正確に計量していきます。それを左右それぞれの手のひらの中で、2つ同時に成型していく様子は職人技です。膜を張らせるように表面の生地を伸ばして包み込むのがコツだそう。

看板商品のホットビスケットもとことん手作り。柔らかくなりやすい生地のため、ホットビスケットを製造する部屋の室温は、この日14度に設定されていました。ひたすら手作業で型抜きをするのは、通称「ホットビスケット隊」。多い時は1日約1万個の型抜きをします。

焼き窯は、平窯、フランス窯、ラックオーブンの3種類。パンの種類によって使い分けます。オールバターが基本の自家製パンですが、上質な粉で製パンする際は、バターではなく、あえて太白ごま油を使用して、粉そのものの風味を引き立たせるそうです。