はじめに

一般的に、腕時計はトレンドが生まれにくいといわれています。そのため、一度ブームになると5年は続くというのが定説。そんな腕時計市場に、まさに今、大きなトレンド変化の波が押し寄せ、それに伴い、にわかに活気づいています。

実際、楽天市場の7月の腕時計売上高は前年同月比13%増と好調です。子供から50代以上のシニアまで各世代の需要を喚起している、腕時計マーケットの最新トレンドをご紹介します。


高級腕時計が売れ始めたワケ

ロレックス、オメガ、タグ・ホイヤー、ブライトリング……。楽天市場では今、高級ブランド腕時計の売れ行きが好調です。

10万円以上する腕時計の売上高は前年同月に比べて23%増えており、50万円以上するものは同42.9%も伸びています。女性ものでは、コーチやグッチの売り上げが好調に推移しています。

購入層は35歳から50歳。今夏の大手企業のボーナスが前年比8.6%増の約95万円と過去最高を記録する(日本経済団体連合会まとめ)など、景気が上向きになっていることが背景として考えられます。

売れ行きが景気に左右されやすい高級腕時計は、1980年代のバブル期にも飛ぶように売れました。当時は「所有していること」に価値がありましたが、今は違います。その時計が生まれた歴史的な背景やブランドの理念、ストーリーに共感して、所有したいと思う人が多いのです。

そして、所有することを通して、他人との違い、自分の個性を表現できるものに価値を見出しています。つまり、「みんなと一緒がいい」という傾向が弱くなってきているのです。

最新トレンドはどんなブランド?

こうした流れは、人気ブランドの変遷にも影響を及ぼしています。

たとえば、スウェーデン生まれのブランド「ダニエル・ウェリントン(DW)」は数年前からブームとなり、よく売れていました。3年前に女優の石原さとみさんがドラマで着用したことで人気に火がつき、無駄のないシンプルなデザインは“ミニマリズム時計”として爆発的なヒットを記録しました。

しかし、ここ最近好まれているのは、シンプルなものより、デザイン性やファッション性の高い時計です。文字盤にトレンドカラーの赤や紫といった色味があるものや、宝石などの装飾が付いたものが人気です。

アイスウォッチの国内限定モデル「アイスユニティ(ICE unity)」

たとえば、カラフルな色合いや、ケースとベルトが一体化したデザインが特徴のべルギー発の「Ice-Watch(アイスウォッチ)」は、現在とてもよく売れている時計の1つです。

シニア層に売れているスマートウォッチ

価格帯が高く、購入層が限られる高級腕時計に対し、あらゆる世代からの需要があり、時計全体の売り上げを牽引しているのがハイスペックなスマートウォッチです。楽天市場では7月に前年同月比で3倍近く売れています。

興味深いのは、ハイテク機器を積極的に取り入れることに抵抗があるはずの50代以上の世代にとてもよく売れているということです。7月の楽天市場では、50歳以上が購入したスマートウォッチの売上高は前年同月比258.5%増となっています。

メールやLINEの確認、スケジュール管理などを手元でできるため、ビジネスシーンで役立つとされてきたスマートウォッチ。ですが、最近ではフィットネス機能に特化したものが多く発売され、自分の趣味に合ったものを選ぶことができるのです。

たとえば、スマホアプリと連動させることで、ランニングなら走行距離と速度を計測できたり、山登りであればGPS機能を活用して地図上の自分の位置を確認できたり、スイング解析やスコア管理ができるゴルフに特化したものも発売されています。

つい最近では、心拍数や血圧を正確に測れるスマートウォッチも登場しました。遠く離れた家族とそうしたデータを共有できるのも、50代以上の世代に売れている理由です。

スマートウォッチに伸びしろがある理由

手軽に購入できるようになったことも、スマートウォッチ拡大の一因になっているようです。今までは3万円以上する商品が多く流通していましたが、この半年間で1万円もあれば購入できるものも増えてきました。

低価格帯のものが続々と発売になっていることもあり、今後、子供向けスマートウォッチ市場も拡大していくのでは、と注目しています。すでに海外では、GPS対応で子どもの位置情報がリアルタイムに把握できたり、ゲームや知育的な機能が充実した子供向けのスマートウォッチがとてもよく売れているのです。

スマートウォッチのアプリはこれからどんどん開発されていくでしょう。新しい機能が搭載されると、買い替えの需要も見込めるため、今後も伸びしろのあるマーケットだと思います。

また、受験会場ではカンニングなどの防止のため、デジタル時計が禁止されることも増えてきています。半面、大学の入試改革でTOEICの受験者数が増えることも予想されます。そのため、学生や資格試験を受ける社会人を中心に、アナログ時計のニーズも高くなるのではないか、と予測しています。

スマホの普及に伴い、ここ数年は市場の縮小が続いていた腕時計マーケット。しかし、こうした流れが一巡したことで、その価値が再び見直され始めています。世代によって選ぶ時計の種類は異なるものの、どの世代からもニーズがあるこのマーケットから今後も目が離せません。

(文:楽天市場 トレンドハンター 清水淳)

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