はじめに

お金をかけずに英文読解をひたすら読むことが“最強”の英語学習法であることを紹介している、この短期連載。昨日配信の第1回では、読むだけで英語力を高める「多読」の有用性について、お話ししました。

第2回は、その多読を成功させるために重要な3つのポイントをご紹介します。


多読における「英単語」の重要性

英単語は、自動車における“ガソリン”のようなものです。ガソリンなくして車は走らないわけですが、単語力のない読解も同じです。

1行の文中にいくつも未知の単語が並んでいる状態では、一向に読解が進みません。文字通り手も足も出ない状態となるので、とにかく前へ進むためには英単語を頭に入れる必要があります。

英単語暗記の重要性は誰しも理解していることでしょう。問題はどのくらい暗記するのかという「数」と、どうやって記憶するのかという「ノウハウ」です。

数としては、頻出・必須単語5,000語を頭にインプットすることで、ウェブニュースや国内の英字新聞、海外の大衆紙で使われる英単語の8割以上はカバーできます。残りの未知の単語については、文脈から類推したり、都度調べながら語彙力を付けていくだけで良いのです。

英文法がなければ事故が起きる?

次に英文法。こちらは、自動車運転における“道路交通ルール”のようなもので、車の走らせ方や標識がわからなければいけないのと同じです。よく「ブロークンイングリッシュでも通じれば良い」との主張が見られますが、それは聞く側に類推させる負担を強いるということを忘れてはいけません。

日本語で「今日、学会で使用する論文を忘れずに持ってきましたか」と言われればスッと意味が通じるところが、「忘れずに使用する今日持ってきましたか学会で」と言われると、何を言わんとしているのかを理解するのに骨を折ります。

ブロークンイングリッシュを話す、というのは聞き手側に負担を強い、敬遠されるので目指すべきではないと考えています。広くて見通しの良い道路を走っていても標識を理解していないと事故を起こしてしまうように、簡単な単語が使われた文章でも英文法がなければ意味がわからないことは多々あります。

The party would have been more fun if you had been there.
(もしもあなたがパーティーにいれば、もっと楽しくなったでしょう)

という文章はどの単語も中学生レベルですが、英文法力がなければ正しく意味がわからないでしょう。スイスイと標識に従って流れるように英文を読んでいくためには、英文法は必須の知識です。

英文読解は素材選びが9割

最後に英文読解。こちらは英単語と英文法をインプットした後、最後の“実地練習”として取り組んでいくものとなります。つまり、経験値です。

自動車の走らせ方や交通ルールを学んだだけでは、路上運転はできません。実際に運転をする経験を積むことで、徐々に運転技術を向上させていくことができるわけです。

英文読解もまったく同じで、英単語と英文法を理解した後は、とにかく文章をたくさん読む必要があります。その際、リーディングに使う素材選びは大変重要で、これを誤ると“あやふや読み”が身についてしまい、それを取り払うことに大変苦労することになります。

多読の有用性については、歴史的な偉人が読解で英語力を身につけていることから、すでに証明されています。しかし、多読の奥が深いのは「ただたくさん読めば良い」というものではないという点です。

英字新聞を読み、英語力向上に努力している同僚がいました。ある時、私は「今日のニュースで面白いものは?」と何気なく聞いたところ、彼女は答えに窮してしまいました。新聞の内容を忘れてしまったわけではなく、自分のレベルに合わない文章だったために活字をなぞっているだけで頭に全然入ってこなかったということなのです。

今の自分のレベルより少し上の素材を選ぶことで、読むたびにメキメキと力がついていきます。英語多読は簡単すぎても、難しすぎても、効果が薄くなってしまいます。「素材選びが9割」と言っても過言ではないのです。

自然と口から出る洗練表現

「英単語」「英文法」「英文読解」の3本柱を中心に、英文読解を続けていくとリーディングやライティングはもちろん、英会話までもが極めて短期間で身につきます。なぜ読解を重ねることで英会話までできてしまうのでしょうか。それは、英文読解で培った文章をそのまま口から出すだけで良いからです。

私は外資系企業に勤務していた頃、定期的に外国人役員にプロジェクトの進捗状況や問題点をプレゼンテーションしていました。その時に使用する表現のほとんどは、英字新聞からそのまま取ってきたものです。

End User Training has been implemented as planned.
(エンドユーザートレーニングは予定通り完了しました)

That project has been postponed until Wednesday.
(そのプロジェクトは水曜日まで延期されました)

このような表現はいつも読んでいる英字新聞によく出ていたフレーズでしたので、特別な英会話訓練などせずに、ただ覚えているフレーズを口から出すだけです。特別な才能や年齢は何も関係がありません。つまり、英会話の厳選は英文読解に直結しているといえます。

普段からたくさんの文章を咀嚼していることで、外国語の運用能力が飛躍的に高まります。日本語でも普段から大量のビジネス記事を読んでいる人は、そうでない人に比べて日本語の運用能力に優れているというのと同じです。

このように英語力を支える3つのポイントを押さえることで、最短で英語の運用能力を高めることができるのです。

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