はじめに

健康や環境に良いとは思いつつ、なかなか手が出にくいオーガニックなどの“エコ”商品。この市場が変わるかもしれません。

9月25日、流通大手のイオンは、プライベートブランド(PB)である「トップバリュ」の戦略発表会を開き、「トップバリュ グリーンアイ」商品の大幅拡充を発表。併せて、食の安全と持続可能な生産管理を実施する農場に付与される国際認証「GLOBAL G.A.P Numberラベル(GGNラベル)」付き商品の展開をアジアで初めて開始することも明らかにしました。

PBでもエコ重視を押し出すイオン。これまで“安さ”が売りだと考えられてきたPB市場で、どんな戦略を描いているのでしょうか。


オーガニック構成比を1%から5%へ

現在、トップバリュ グリーンアイには3種類の商品ラインがあります。有機栽培を行い公的なオーガニック認証を受けている商品を取り扱う“オーガニック”、生産過程において化学合成された薬品を使っていない生鮮品やその加工品を取り扱う“ナチュラル”、そして気になる添加物や原材料などを使用しない”フリーフロム”の3種です。

 イオン「トップバリュ」戦略発表会公表資料より(編集部撮影) 

今回、2018年8月末までにこの3ラインで合計420品目取りそろえ、さらに9月以降もオーガニックで15品目、フリーフロムで37品目を順次販売すると発表しました。

また、オーガニックについては販売を強化するため、オーガニックコーナーを持つ店舗を2019年2月末までに600店舗まで増やします(2018年2月末時点で309店舗)。さらに、イオンが取り扱う農産物でオーガニックなものは2017年度時点でわずか1%ですが、これを2020年度までに5%にする目標も発表しました。

戦略発表会で説明にあたった三宅香執行役は、「5%は達成します。やらなければならないし、われわれの規模だからできると考えています」と自信を見せました。

世界のオーガニック市場は拡大を続けており、その市場規模は米国で3.2兆円、欧州で3.1兆円にのぼります(2016年農林水産省発表資料より)。また、近年は韓国や中国でも取扱量が増えているといわれています。

一方の日本は、オーガニック商品の普及が進み、市場も伸びつつあるものの、やはり先進各国に比べると規模や勢いに差があるとされていいます。この点について、三宅執行役は「原因はやはり価格が高いこと」と話します。

どうやって商品価格を下げる?

現在、日本でオーガニック農法を行うのは小規模生産者が中心で、その産地もさまざまです。これまでイオンでも取り扱う商品を増やしたいとしながらも、その物流や商品管理のコストが高くつくため、手に取りやすい価格にできなかったといいます。

そこで今回イオンが取り組んだのは「サプライチェーンの起点を変えること」(三宅執行役)です。従来はイオン店舗側の販売計画に基づき、産地から店舗が求める農作物を大量に定時買付していました。これをオーガニック農産物については産地を基準に変え、採れたものはイオンが「全量買い」する形になります。

さらに、各エリアで生産者を組織化することで物流も効率化します。こうしてできたコストカット分を販売価格に反映し、消費者がより手に取りやすい価格でオーガニック商品を流通させるという戦略です。

三宅執行役は「欲しいと思っていらっしゃる方はいらっしゃる、でも価格で手がとどかない、しかし売れないと価格も下げられない、その悪循環を変えたい」と話します。

イオンは、2020年度には日本国内でオーガニックの契約生産者数は5倍に、生産面積は10倍を目指すと発表しています。まさにイオンの規模を持ってして採れる戦略です。

トップバリュ=“エコ”になるか

イオンがPBで“エコ”に力を入れるのは、今に始まったことではありません。「トップバリュ グリーンアイ」が、その前身であるPB「グリーンアイ」としてスタートしたのは、実に25年前の1993年。2000年にトップバリュブランドに統合され、現在はイオンのヘルス&ウェルネス事業の中核PBとして展開されています。

さらに、2017年4月には「イオン持続可能な調達方針」を掲げ、2020年度までにPB商品においては、世界食品安全イニシアティブ(GFSI)認証の管理の100%実施を目指しています。

とはいえ、トップバリュの中でも現在売り上げの8割近くを占めるのは、通常のトップバリュや「トップバリュ ベストプライス」に属する低価格商品です。三宅執行役はこの低価格商品について、今後もトップバリュの主力商品群として品質と価格両面を追求するとしたうえで、グリーンアイを主とするヘルス&ウェルネス商品の売り上げを2019年度には3割近くまで引き上げたいと話しました。

これまで“低価格”商品の代名詞にも思われていたイオンのトップバリュ。今後は“エコ”商品の代名詞となれるでしょうか。同社の事業展開の巧拙が、日本のオーガニック市場の将来も左右しそうです。

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