はじめに

生みの親が育てられない赤ちゃんや子どもを「わが子」として育てる「特別養子縁組」が注目されています。欧米では一般的な親子の形ですが、日本で特別養子縁組を使って子どもを迎えようとすると、「費用を含め実態が見えづらい」という“壁”にぶつかります。

連載では、費用や事業者選びなど、納得のいく形で子どもを迎えるためのノウハウをお伝えします。初回は、特別養子縁組の基礎知識からご紹介します。


2年前、子どもの権利を明確化した改正児童福祉法が成立

近年、テレビや新聞のニュースや雑誌などで、特別養子縁組や里親という言葉を聞くことが多くなってきています。背景には、貧困や虐待など何らかの事情で実親と暮らすことができない社会的養護の子どもの「最善の利益」を明確化した2016年の改正児童福祉法の成立があります。

日本には、さまざまな事情によって実親のもとで暮らせない社会的養護の子どもたちが約4万6,000人おり、その約8~9割が乳児院や児童養護施設などの施設で暮らしています。施設で暮らす子どもたちは寝食に困ることはありませんが、特定の大人との愛着が形成されづらいことから、里親・ファミリーホーム・特別養子縁組といった「家庭養育」を原則にしていくことが打ち出されました。

中でも、血縁のない子どもを実の子のように戸籍に入れて育てる特別養子縁組は、不妊で子どもを持つことを諦めかけた夫婦などから注目され、成立件数も少しずつ伸びてきています。一体、どのような制度なのでしょうか。

生みの親との法的な親子関係を解消させる

特別養子縁組は、実の親が育てられない原則6歳未満の子どもと、血縁のない原則25歳以上の夫婦が戸籍上の親子となるための制度です。家制度や跡継ぎの維持のために利用されてきた普通養子縁組とは違い、血縁関係のない子どもを実の子と同じように育てたいという社会的な要請と、子どもの福祉の観点から1987年に整備されました。

特別養子縁組と普通養子縁組は、さまざまな違いがありますが、最も大きな違いは、生みの親と子どもの法的な親子関係の有無です。特別養子縁組は、家庭裁判所の審判によって、子どもと養親との間に親子関係をつくり、生みの親との法的な親子関係を解消させます。

そのため相続権や扶養義務は子どもと養親との間にだけ成立し、実子と同じ扱いとなります。戸籍にも子どもは実子と同じく「長男」「長女」などと記載されます。

一方の普通養子縁組は、親権者は養親ですが、生みの親との法的な親子関係も継続するため、子どもは生みの親と養親の扶養義務と相続権を二重に持ちます。そして戸籍には「養子」「養女」と記されます。

参考 厚生労働省「普通養子縁組と特別養子縁組について」

子どもがほしい夫婦にとっては、普通養子縁組より特別養子縁組を利用したほうがメリットがあることが分かります。一方、養親に迎えられた子どもも、実子と同様に継続的な愛情を受け育てられますので、心身の状態は安定します。特別養子縁組は、養親にとっても社会的養護の子どもにとっても理想的な制度なのです。

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