はじめに

児童相談所と民間事業者の両方に登録する夫婦も多い

血縁のない子どもを、特別養子縁組を通して迎えるためには2つの方法があります。一つは児童相談所に登録して子どもを紹介してもらう方法、もう一つは特別養子縁組を仲介する民間事業者に登録し主に新生児をあっせんしてもらう方法です。筆者の取材では、児童相談所と民間事業者の双方に登録し、早くに紹介されたほうに決めたというケースが多くありました。

児童相談所で子どもを紹介してもらうためには、まずは都道府県が認定する「養子縁組里親」に、登録することが必要です。養子縁組里親に登録するための要件は自治体によって異なりますが、厚生労働省が「子どもが成人したときに65歳以下である年齢」としているため、これに準じて実質45歳程度までに設定している自治体が多くあります。

しかし今は65歳を過ぎても元気な時代ですから、養子縁組里親の登録でいる年齢要件を緩和する自治体も出てきています。東京都は今年10月から「50歳未満」としていた年齢要件を撤廃し、「原則25歳以上」のみの要件となりました。詳しくはお住まいの地域の児童相談所に聞いてみてください。

厚生労働省 児童相談所一覧(2017年度)

民間の事業者は、どのように選べばよいのでしょうか。運営主体はさまざまで、医療法人、一般社団法人、NPO法人、個人などがあり、登録できる年齢の要件等も、事業者ごとに異なっています。厚生労働省の2018年4月1日段階の調査では、全国に29団体あります。

参考 厚生労働省「養子縁組あっせん事業者一覧(2018年4月1日現在)」

民間事業者を選ぶ際に一番大切なことは、都道府県の許可を受けた事業者かどうかを確認し、それ以外の事業者との契約は避けることです。営利を目的に養子縁組をすることは禁止されており、養親からは「実親の出産費用など厚生労働省で定めた手数料」のみ受け取れることになっています。

民間事業者を選ぶうえで、もう一つ大切なことは、その理念です。サイトを一つ一つ確認すると、団体ごとに理念が違うのが分かります。気になる事業者があったら、直接出向いたりして事業者の雰囲気をつかむことができればベストです。

無料の児童相談所、3万円~200万円以上の民間事業者

児童相談所と民間事業者の違いは主に、①あっせん費用②紹介される子どもの年齢③縁組成立後のフォロー体制――の3つがあります。順に詳しくみていきます。

①あっせん費用~

児童相談所に登録し、子どもを紹介してもらうのは、基本的に無料です。一方の民間事業者のあっせん費用は、およそ「3万円~200万円以上」です(厚生労働省調べ)。少し古いデータになりますが、以下に一部を紹介します。

近年は、特別養子縁組が注目されていることなどもあって新しい事業者の参入が相次いでいます。そこで新しい事業者を含めてマネープラス編集部が各事業者のウェブサイトを調べたところ、費用に関して公開している事業者と、公開していない事業者がありました。公開していた事業者の費用を、以下にまとめます。

民間事業者の費用が高額なことの背景には、生みの親の出産費、宿泊・滞在費、交通移動費、社会福祉士などの専門職を雇用する費用などがかかるためです。児童相談所は、こうした費用を税金でまかなうことができますが、民間事業者の多くは、子どもを希望する養親側に請求しなければ事業が成り立たないのも実情です。民間事業者の実情に詳しい東京都内のあるソーシャルワーカーは次のように指摘します。

「例えば民間事業者の中には、性暴力被害にあった女性をかくまい、出産までの宿泊場所を含め提供しているようなところもあります。また女性側が未成年で出産の事実を隠したい場合などには、医療保険を使わずに出産させることも考えられます。民間事業者が、明確に費用を打ち出せない背景には、こうした様々な閉ざされた背景があることが多いためです」

こうした事情もあって、明確に費用を公表していない事業者もあるのです。しかし費用を公表していないからといって、悪徳事業者であるというわけではありません。実際、費用をサイトで公開していない事業者の中にも、児童相談所よりも親身になって支援をしてくれるところもあります。

一方で、予想外の金額を請求され、納得がいかない事態に陥ることも考えられます。事業者の理念とともに費用の目安もきちんと聞いて納得してから契約するようにしたいものです。

②紹介される子どもの年齢~

一般的に児童相談所を通した場合は、生まれてすぐの新生児は少ないのが実情です。愛知県など一部の児童相談所では新生児の特別養子縁組に積極的に取り組んでいますが、増え続ける虐待対応による人手不足から新生児委託を実施している児童相談所は全国的に少ないためです。

そのため児童相談所を通して紹介されるのは、すでに乳児院や児童養護施設で暮らす6歳未満の子どもが大半となります。一方、民間事業者を通した場合は、予期しない妊娠をした女性が出産した新生児の紹介が多くなります。

③縁組成立後のフォロー体制~

児童相談所を通した場合は、縁組成立後も引き続き養親同士の交流サロンに参加しながら同じ立場の友人を見つけ、悩みや喜びを共有したりすることができます。一方、民間事業者の場合は、フォロー体制には事業者ごとにばらつきがあります。交流サロンは開催されているところあれば、ないところもあります。

養親同士の繋がりは、子どもに真実告知を行う際や、思春期特有の悩みが出たときなどに、非常に頼りになるものです。交流サロン等のフォロー体制までを含め、よく調べてから契約したいものです。

この記事の感想を教えてください。