はじめに
いつの時代も、語学留学に対する憧れを持つ人は少なくありません。
「語学留学をしてシャワーを浴びるように英語を使う環境に身を置けば、自分も自然に英語が口をついて出るようにペラペラになるのではないか」と考える気持ちを持ってしまうのは、わからなくもありません。私自身、昔は「英語力をつけるため、いつか海外生活をしてみたい」と思っていました。
しかし、実際に海外生活をした経験からいえば、語学留学をしたとしても、それだけで自然に英語力が伸びることはありません。この記事を読み、日本でコツコツ英文を読んで頑張っている人に勇気の出る言葉をプレゼントするとすれば、「英語は日本国内で身につく」ということです。
留学は上達しやすい環境があるだけ
語学留学は大きな効果が得られないばかりか、お金も時間も大変にかかる自己投資となります。仕事に就いている人にとっては「キャリアの中断」にもなりますので、大きな機会費用となります。
それだけ大きな投資であるにもかかわらず、費したものに見合う成果が得られません。語学留学をしたとしても、そこに日本で学習する何倍もの効率的な学習環境があるわけではありません。そこにはただ、「学習しやすい環境」があるだけです。
周囲は外国人ばかりですから、「自分の拙い英語を聞かれて恥ずかしい」と思うこともありません。また、周りが英語を話していますから、どうしても使わざるを得ないという環境は確かにあるでしょう。
ただ、そうした環境に身を置いていれば、勝手に語学が上達するという幻想にとらわれてしまうと、真剣に自分が勉強するという歩みを止めてしまう逆効果の要素も存在します。語学留学は「語学の勉強をしやすい理想的な環境がある」というだけでしかないのです。
たとえば、優秀な人達がたくさん働いているIT企業に勤めていると仮定しましょう。あなたは何もしなくても、周囲の影響を受けて自然に凄腕プログラマーになるでしょうか。そんなことはありませんよね? 自分が必死に頑張らなければ、周囲の環境がどれだけ恵まれていたとしても、一歩も成長することはないのです。
英語が身につくかは自分次第
世の中には、どうしても不公平は存在します。しかし、こと語学学習についていえば、本当に公平な世界です。
性別や年齢、才能もまったく関係ありません。お金持ちの人がどれだけ大金を積もうとも、頭に機械を装着してバチッと電気を流せば、ある日突然に英語ができるようになる、そんな魔法のような方法は存在しないのです。
語学の勉強は、自分が頑張らなければ絶対に身につくことはありません。実際、知人は語学留学に何百万円も費やし、何年も海外に行っていますが、いまだに満足に英語を使うことができていません。彼は海外に行っても遊んでばかりで、真剣に英語の勉強していないからです。
また、1年以上海外に身を置いているにもかかわらず、航空券の手配をeメールで私にお願いをしてくる人もいます。
語学の勉強は自分が歩んだ歩数分しか、その成果が得られることはありません。海外に身を置けばエレベーターに乗るように自動的に上級者にしてくれる、ということは絶対にないのです。
語学上達に必要なプロセスとは?
そもそも、語学を上達させるプロセスは大変シンプルです。
(1)良質な英語をたくさんインプットする。
(2)インプットした内容をアウトプットで使う練習をする。
たったこれだけです。私の提唱する「多読による英語力向上メソッド」は、とにかくたくさん英文を読み、その読むプロセスの中で英語の回路を作るというものです。
短期間に膨大な英文を脳内で処理して、「英語回路」を作ります。そして読解を通じて、頭に入った内容をそのまま取り出し、書き、話すといったアウトプットを繰り返すだけで、英語を使えるようになるというメソッドです。
このインプットのプロセスは、日本の中で生活をするだけで十分進めることができます。海の向こうに行かなければ手に入らない何かがある、というものでは決してないのです。
英語力は電車の中で上達した
私はときどき、「あなたはアメリカの大学に留学しているではないか!」と言われてしまうことがあります。しかし、私は英語力のある状態で留学しました。すでにTOEIC800点以上の英語力がある状態で、米国の大学に留学して会計学を専攻していたのです。
本音をいえば、ついでに英語力が伸びればいいなという下心はありました。会計を勉強するつもりで留学し、実際に毎日夜中まで勉強して、米国会計基準の知識についてはかなり力がつきました。
しかし、英語力に関していえば、留学をしたことでそこまで飛躍的な高まりを感じたことはありませんでした。むしろ、留学前に電車の移動中に必死に取り組んでいた英字新聞の読解のほうが、日々大きな力の伸びの手応えを感じたほどです。
留学に夢と憧れを持つことは悪いことではないと思います。人生に一度は、海外での生活を経験するのは悪いことではないでしょう。しかし、語学の上達だけを目的にしていくのであれば、コストパフォーマンスはとても高いとは思いません。
「語学留学をして海外に身を置けば、自動的に英語が上達する」ということはありません。世界中どこにいようとも、コツコツと歩みを一歩一歩進めていくほかに、語学の上達はありえないのです。その意味において、本当に外国語の勉強というのは極めて平等な世界だと痛感させられます。
中学レベルの僕が「読むだけ勉強法」で英語をペラペラ話せるようになった! 黒坂岳央 著
お金をかけている人ほど英語は上達しない⁉ 5年間のニート・フリーター生活を経て、外資系企業に勤務し、今は経営者となった筆者による、独自のシンプル&純ジャパに最適な3ステップ初公開!お金、時間、知識がゼロからでもスタートできて、会話も読み書きもスラスラできるメソッドを詰め込んでいます。